58話 白竜
ブレイズを散々あおっていたリアだが、少し焦りを感じていた。なぜならばスキル【創造神】の力をもってしてもブレイズについて一切の事が分からないのだ。
なぜ何もわからないのか、考えられるのは、何らかの方法で鑑定や探知系のスキルを無効化している、もしくは魔法やスキルを無効化するスキルを持っている。その無効化の範囲が鑑定などにも働くと考えればあり得る話だろう。いずれにせよ厄介な相手ではある。
ドラゴンを使役することができるようなスキルを持っていることはほぼ確定だろうが、それ以外について全く情報がない状態で戦闘をしなければならない。
いくらでも戦いようはあるだろうが、万が一魔法が一切効かなかったり、スキルを無効化されたりしてしまうとかなり厳しくなる。
ここまで考えたところでブレイズが襲い掛かってきた。
(さてどうしたものか……とりあえず、皇帝たちを巻き込まない程度の範囲で魔法を使ってみて、効くかどうか確かめるのが先決か。)
そう考え、相手の攻撃を魔法の効果で上昇させた身体能力を駆使してかわしながら範囲指定で魔法を使用した。
「パラライズ」
リアが大多数世相手にするときによく使う手である。その結果は……
結論から言うと何も起きなかった。
あくまでリアの推測に過ぎないが、おそらくあの白竜のうろこが魔力をはじいていると思われる。魔法が命中すると同時に白竜のうろこからかすかに電気が放電された。うろこで魔法をはじいて、その硬さで物理攻撃も効きづらそうである。
そうなるとリアが取れる手段は一択である。禁呪を駆使して本気で殺しにかかるしかない。
「申し訳ありませんが、本気で行かせていただきます。最悪というかほぼ確実に殺してしまいますが、いいですね?」
「ようやく本気を出す気になったか。ほら早く見せてくれよ、本物の勇者とやらの力を」
「ではお望み通り、まずは相棒の竜から……。【地獄の業火】」
リアがそう唱えると竜が業火に包まれた。ブレイズは巻き込まれる直前に地面に降りていたので無傷だが、竜の方は苦しそうな咆哮をあげている。
「ほぉ、こいつにダメージを与えることができる魔法とは少し気になるな。」
ブレイズはなぜか感心している。
そして魔法の効果が切れ炎のあった場所には白竜がたたずんでいた。しかし、炎で所々が焦げて茶色くなっている。しかし、その竜はたたずむばかりで動こうともしない。
1分ほどたつと、急に光始めたかと思えば光の粒子となって霧散していった。
 




