57話 勇者候補
背後からの攻撃を受けたリアだが、見た目ほどダメージは受けずに済んだ。というのも、10万を超えるの軍勢とサリスを撃破したことでレベルがかなり上がり、ほかのステータスに比べてかなり低いVITも通常ではありえない数値になっているのである。
今リアが受けた攻撃は、通常の人間が食らえばおそらく頭が爆ぜていたことだろう。しかしリアは、後頭部に切り傷を受ける程度で済んだ。
それでも深手ではあるのですぐに回復魔法を使用して治癒する。
「グレーター・ヒール」
そう唱えるとすぐに傷口がふさがる。
治癒を終えたリアが皇帝の方を見ると、怯えるような顔をしている。おそらくこの一撃でリアを殺すことができると思っていたのだろう。
そしてその後ろには白竜とその背中に乗った一人の冒険者風の男がいた。視界にとらえている今でさえ魔法による探知に引っかからない。つまり白竜、もしくはあの男のスキルによって気配を消しているのだろう。
スキル【創造神】の力で白竜について知ろうとしたが何もわからなかった。つまり白竜自体がそれだけ異端な存在であるということだ。
「なぜ先ほどの一撃で深手を負っていない!?」
そんなことを考えていると白竜の背に乗った男が声をかけてきた。
「何でそんなことが知りたいのですか?もし知りたいのならまずは名乗ってもらえますか?名も知らない相手に慈悲を与えるほど私は優しくないので。」
「小娘が舐めやっがって……。まぁいいだろう、俺の名前はブレイズ。勇者となるべく育てられ今では勇者候補とまで言われているドラゴンナイトだ。」
「たかが勇者候補ですか。はぁ、その程度なら私に喧嘩を売ってほしくないのですが。」
「なんだと小娘が!調子に乗るなよ。」
「調子に乗ってなどいません。私について教える約束だったので教えてあげましょう。私はリア、勇者リアです!」
リアがそう宣言すると両者の間に数秒の沈黙が流れた。数秒後、先に口を開いたのはブレイズだった。
「おまえのような小娘が勇者だと!?吐くならもっとましな嘘を吐けよ。」
「嘘なんかではないですよ。もしあなたが望むならあなたを倒して証明してあげましょうか?私は人殺しはしない主義なのでもちろん殺しはしませんが。」
「いいだろう。消し炭にしてやるよっ!!」
そういいながらブレイズが襲い掛かってきた。




