56話 開戦
リアは感じていた。城に帰るまでの道のりですべての枝道に騎士が隠れていることを。そしてその目的にもおおよそ気が付いていた。
(皇帝は聡明そうな人だったし、きっとここで殺して置かないと災禍になりかねないと考えたのね。その判断は分からなくもないけどあの戦いの詳細を知ってもそれなのかしら?それかあまりにも規模の違いすぎる話に頭がおかしくなったのか、騎士が詳細を伝えなかったのか。おそらく前者だろうけど警戒するに越したことはなさそうかな。)
そんなことを考えつつ、スキル{創造神}を使って敵の強さと数を把握していた。おおよその敵の数は5万、しかし建物の中にいる可能性もいるため、それも踏まえて7万は見ていた方がよさそうだ。そして、ここの強さは先ほど城壁の上で気絶していた騎士と同じくらいの者から先ほど戦った魔族たちと渡り合えそうな猛者まで様々だ。しかし、リアからすれば大した強さを持っているものは現状1人も確認できなかった。この国にSランク冒険者がいればそれを不意打ちでけしかけてくるはずなのでもちろんそれも警戒しておく。
そして城の前までたどり着いたのだった。
城門の上にはいつの間に作ったのか人が乗れるようなスペースができており、そこには皇帝がいた。
「これはこれはリア殿、我が国をお守りいただき……」
「小芝居は結構ですので町中に兵を待機させていることの説明を願えますか?」
「チッ、気づいていたか。それでははっきり言わせてもらおう。我が国は勇者リア、そしてクヌム王国に対して宣戦を布告する!」
「そんなことだろうと思いました。どうせ私のサリスとの戦闘について知って異次元さにおじけづいたのでしょう?」
「断じて違う!我が国はもともとクヌム王国に宣戦布告をするつもりだったのだ。それがサリスの襲来で少し遅れたに過ぎぬ。兵たちよかかれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
皇帝のその咆哮を合図にすべての兵が動き始めた。リアが想定していたよりも多く、その数は8万であり、さらに、サリス相手でも1分くらいは戦えそうな人間にしては化け物クラスの強さのものまでいる。
しかしリアは動じることなく魔法を唱えた。
「パラライズ」
ここに来るまでにすべての騎士たちを対象として指定しながら歩いていたので騎士たちはこの一撃で誰一人身動きが取れなくなってしまった。
それを見て怯んでいる周囲の冒険者たちそれぞれその周辺を対象として【パラライズ】を発動させることによって少しずつではあるが戦闘不能にしていき、ついに立っているものは一人もいなくなった。
全員を戦闘不能にしたのでリアが皇帝の方を見てみると、皇帝は怯む様子もない。むしろ何か企んでいるような笑顔を浮かべている。
リアはこれ以上自分に敵意のある存在を肯定と大臣以外確認されなかったので何かのはったりかと思っていた。その直後、リアは後頭部に大きな衝撃を受けた。




