55話 皇帝の決断
騎士たちの中には気絶してしまっている者もいたため、一人の騎士に城まで報告に行かせ、ほかの騎士たちが全員行動できる状態になってからもともと城壁の警備を担当していた騎士たちに警備を引き継いで騎士たちを連れてリアは城に向かったのだった。
一方そのころ城では
「サリスを一騎打ちで倒しただとぉぉぉぉぉぉ!!!」
皇帝が絶叫していた。それもそのはずだ。永劫の時を生き、歴代勇者の中でも多くのものが敗北したとうわさのあるデーモンロードを単独で撃破したのだから。
そんな皇帝に対し、一人の騎士が
「誠にございます。こちらに現場を撮影した映像記録用の水晶がございますが、ご覧になりますか?」
「よい。貴様も見たところかなり疲弊しているようだな。その水晶を大臣に預け貴様は休むがよい。」
「はっ。お心遣い感謝いたします。」
そう言って、大臣に水晶を渡し去っていった。
皇帝はしばらく絶望の表情を浮かべて大臣に
「映像を見せてくれ。」
そういった。この水晶には記録した映像を投影する機能もあるので、複数人で見る際にも便利なのである。
大臣はすぐに映像を投影し、皇帝と大臣のみの部屋の中で、【天界の裁き】による惨劇が繰り広げられた。
その後1度目の【地獄の業火】を使用した時点で皇帝が映像を止めた。
「なんなのだあれは!?あんなことが人間にできるものか!あれは滅ぼしておかないと万が一魔王を倒されてしまってはかなわん。大臣今すぐ我が国が今すぐ準備できる最大兵力を用意せよ。奴にぶつける。」
「しかし万が一やつの怒りを買ってしまっては我が国は滅ぼされますぞ!」
「それでもだ。奴は今滅ぼしておかないと今後世界を滅ぼしかねない力を持っている。」
皇帝がそういうと、その気迫に圧倒された大臣がしぶしぶといった様子で
「承知いたしました。今出撃させることができる最大兵力5万に加えてすべての冒険者合計3万を動員しましょう。冒険者の中には強者もおりますのでどうにかしてくれることでしょう。
「それでもたったそれだけか。仕方がない。我が国が滅びようとも我が国との戦いで疲弊したやつを同盟国が打ち取ってくれることを信じてすべての兵をぶつけるぞ!」
その皇帝の一言でその日ゼリア皇国史上最大の戦争の開戦が宣言された。その兵力は冒険者を含めた混成軍団8万。それに対して敵の兵力は勇者1人のみ。数字だけ見ると圧倒的過ぎる戦力差に見えるが、その差が世界に現代に生まれた勇者の圧倒的な力を知らしめることになるのだが皇帝がそれを知るのはまだ少し先の話である。




