54話 決着
1時間後その業火が顕現していた場所では2人の人影が人の目には追えぬほどの速さで戦闘を繰り広げていた。
「何で人間であるはずのあんたみたいな小娘が禁呪なんてものを使えるのよ!おかげでのこりのHPが100になってしまったじゃないの!」
リアに襲い掛かりながらも激昂している魔王軍幹部のサリス。それに対してリアは答えることなく、常に小声で何かを言っている。
サリスは自分を無視するリアに余計に腹が立ったのかさらに速度を上げてリアに襲い掛かってきた。リアも魔法を駆使した最大速度で応戦する。支援系統の魔法をフル活用しても実はギリギリなのである。しかし、それでもリアはずっと何かを唱えている。サリスはそれを耳を澄まして聞き取ろうとした。
そして聞こえてきた内容は
「スキル{賭博}」
そう連呼していたのだ。サリスは知らないうちにリアに大量のスキルを使わせてしまっていたのだ。
「ふざけるな、小娘がぁぁぁぁぁ!!!」
サリスはさらに激昂する。しかし、その程度で怯むリアではない。今何度か使用したスキル{賭博}の効果で魔力量はさらに100倍、HPと魔力は全回復した。そして【プロテクションマジック】を発動させる。
そして物理戦闘をしながら、今度は残存している全ての魔力を込めて魔法の詠唱をする。それを聞いたサリスは顔を真っ青にする。
「貴様貴様キサマァァァァァァ。これ以上魔法は使わせんぞぉぉぉ!」
そう叫びながら襲い掛かってくる。もはや男なのか女なのかわからない。冷静さを欠いているようで単調な攻撃ばかりなのでとてもかわしやすい。
戦闘行為を行いながら魔力を練り上げるのは非常に難しく、20分もかかってしまった。逆に言えば、20分かけて敵にやられることなく魔法を完成させた。
「魔王軍幹部サリス!!これで終わりにします!!禁呪【地獄の業火】!!!!!!!!!!!!」
リアがそう唱えると同時にまたしても結界内で圧倒的な力を持つ業火が炸裂した。もはやサリスに挽回の術はなく10分もしないうちに焼き尽くされて消滅した。サリスが消滅したのを確認すると、リアは証拠品としてサリスの持っていた杖を回収し、【地獄の業火】と結界の魔法を解除し、外へ出ていった。そして城壁に向かって
「私たちの勝利です!!!!!!!!!!!!!」
そう宣言したのだった。
もちろん城壁にいた騎士たちは状況の理解さえほとんどできていなかったが、戦闘を見ているだけで疲弊していたようで、騎士たちの大半はその場に座り込んでしまった。




