52話 サリスと禁呪
「なによあなた。私は今余裕がないからたとえ子供であろうと邪魔をするなら容赦はしないわよ。」
サリスのところにたどり着いた途端そんなことを言われた。普通の人間が出せるはずのない速度で走ってきたのだが、そんなことに気が付かないほどに激怒しているらしい。
「何って、あなたが呼んだんじゃないですか。呼んだ相手に対してそれはないでしょう?」
「呼んだって何のこと……、まさかあなたが私の軍勢を一人で壊滅させたっていうの!?」
「そうですが何か?」
「何か?じゃないわよ。あなただけは絶対に許してあげないわ。この世で最大の苦しみを与えながら殺してあげる。」
そういうと何かの魔法の詠唱を始めた。それを聞いた途端、一切の魔法を一撃だけ無効化できる魔法を作り出し、即座にそれを発動させた。
「なんの魔法を使ったか知らないけどこれを耐えられると思わないことね。」
そうサリスがいってきてはいるが、リアもこの魔法をなめているわけではない。この魔法は次元が違うこともリアは知っている。ほかの人類がこの魔法の詠唱を聞いても何のことなのかわからなかっただろう。しかし、リアにはわかる。なぜならばそれは人類で彼女しか使うことのできない魔法だったからだ。
「禁呪【悪魔の呪い】」
サリスがそう唱えると同時にリアが黒い瘴気で包まれた。それは確実に彼女を殺しうる攻撃だっただろう。しかしその魔法について知っていた彼女はそれに対応して見せた。それに対して魔法が命中し、すでに勝利を確信しているサリス。この差が勝敗を分けることとなる。
サリスは瘴気に包まれるリアを見て勝利を確信し高笑いをしていた。
「ハハハハハハハ!!これがデーモンロードの力よ。このまま死ぬまでその瘴気に包まれているといいわ。」
そんなことを言っていた。
それに対してリアは瘴気に包まれながらもその中で魔力を高めていた。これから発動させる魔法に今の残り魔力のうち一部を残したその魔力およそ1杼1100垓を込めて使用する魔法だ。
しかし、それではおそらくこの国を滅ぼしてしまうのでまずは自分自身に魔法が効かないようにする。そして、内部で発生した一切のエネルギーが外に出ることができないというとてつもない性能の結界を半径10メートルの範囲に貼る。外からは中の様子を見ることができるのでこれでリアの力も国王や周辺国家に伝わるだろう。
結界を張ってもサリスはそれに気づく様子がない。歓喜と興奮の絶頂でそれどころではないのだろう。
それを確認したリアは、先ほどの【天界の裁き】で膨大な魔力を操るすべを身に着けていたので今回はより正確にそしてスピーディーに詠唱をした。
そしてその詠唱が終わると同時にサリスの放った【悪魔の呪い】の効果が切れ、瘴気が消え去った。




