5話 無詠唱魔法と初戦闘
「……………………」
(何も考えてなかったから気づかなかったけど今詠唱したっけ?)
「ファイヤーボール」
今度は、あたり一帯を燃やし尽くしてしまわないように空へ向けて打ち上げた。
やはり詠唱はしていない。しかも先ほどと違い、威力もコントロールできている。
「やったぁぁぁぁ!!」
無詠唱について知ったその日にリアは無詠唱で魔法を使い、コントロールできるまでになったのだ。
その日からリアは、無詠唱で魔法を使い続け、魔法の書に書かれているほぼすべての魔法を1か月で使えるようになった。そのすべてを無詠唱で発動することで、リアの技量もその魔力量に見合うものになってきた。
そして、ついにその日が来た。
オリジナル魔法の開発である。リアにとっては何よりも楽しみにしていたことである。
(どんな魔法にしようかなぁ)
お昼を食べて、丘の上にある気に体を預けながらそんなことを考えていると、少し離れたところにある茂みから、4体の人型をしたモンスターが現れた。ここにはほとんどモンスターが出没しないはずだが、どこからか、近づいてきていたのだろう。そのモンスターは人よりもかなり小柄、緑色の肌をしている。そう、ファンタジー物によく出てくるゴブリンである。しかし、背後から近づいてきているためリアはなかなか気づかない。
そのまま気づくことなく、5メートルほどのところまで近づいてきていたゴブリンが、足音を立ててしまった。
リアもこれには気づき、だれか村の人が来たのかとゆっくりと振り返った。そこにゴブリンがいるのだから大変である。
こうやって、リアにとっての初めての実践戦闘が始まったのである。
この世界のゴブリンはそれなりに強く、4体ともなると中堅冒険者でも勝てるかどうか怪しいレベルの存在である。しかしパニックになっていたリアはそんなことは考える余裕もなく……
「ソニックムーブ」
10分間、足を極限まで速くする代わりに物理攻撃ができなくなる。
魔法を発動させ、一気に距離をとると、
「マリオネットネイチャー」
自然系統最上位の魔法を発動させた。この魔法は効果時間は20秒と非常に短く、使用に必要な魔力量も多いが、その分、半径150メートルの範囲の自然を好きなように操れるという効果を持つ。実はこのあたりからリアは少し落ち着きを取り戻していた。そして、地面にある草を極限までとがらせ、ゴブリンたちめがけて雷を落とした。ゴブリンたちは4体ともこの一撃で絶命した。
(意外とあっさり倒せちゃった。)