49話 皇帝
通された部屋で1時間ほどくつろいでいると、部屋の扉がノックされた。
「はぁい」
くつろいでいたこともあり、間延びした返事をしたリアだが、その後に発せられた声を聞いて一気に緊張を増すことになる。
「皇帝陛下がリア殿に今作戦について重要な話があるとのことです。」
皇帝陛下は基本的に大臣を通して発言すると聞いていたのでかなり驚いたリアは
「分かりました。すぐに準備いたします。」
そういって、収納魔法で作った空間に武器をすべてしまい込んだ。おそらく一時的に預かると言われるので、万が一盗まれたりすることの無いよう、一時的な措置である。その後軽く服装を整え、
「お待たせしました。」
「いえ、それでは皇帝陛下のもとへお連れいたします。」
そういってリアを呼びに来た騎士は歩き始めた。城の中は人もあまり歩いておらず、とても静かだった。何事もなく皇帝のいる玉座の間にたどり着いた。
「皇帝陛下へ申し上げます。クヌム王国よりの使者殿をお連れいたしました。」
騎士がそう言うと中から
「通せ。」
と、1時間前までリアと話していた大臣の声が聞こえた。
「はっ。それではこちらからお通りください。」
そういって大扉の端の方にある普通の大きさの扉から中に通された。
玉座の間には皇帝らしき人物と大臣のヤモンの二人しかいなかった。皇帝はかなり若く、おおよそ20代といったところだろう。
中に入ると皇帝が話し始めた。
「よくぞ参られたリア殿。ヤモン一度席を外してくれ。彼女と二人で話がしたい。」
「かしこまりました。何かございましたらいつでもお申し付けください。」
そういってヤモンが退室していった。
「さてリア殿、先ほど大臣から作戦について聞かせてもらったが、にわかに信じることができない物だったのでな。まずは冒険者カードを見せてくれるか?」
「はいこちらです。」
そういうとリアは国王に冒険者カードを渡した。
「ほう、ヤモンから聞いてはいたがここまでのステータスの持ち主は見たことがないな。それで、リア殿が一人で敵軍を殲滅するとのことだったがそれは実際可能なのか?」
「はい。少なくともサリス以外の魔族はすべて一撃で葬り去れます。もちろん準備は必要ですが。」
「そうか。万が一軍勢を全滅させてもなおサリスが襲い掛かってきた場合はどうするつもりなのだ。」
威圧感のある声でそう尋ねてきた。自分の国の命運をたった一人の少女に預けろと言われたのだ。無理もないだろう。
「私は極大魔法を使用できるうえ、結界も作り出せます。それらを駆使して少なくともこの国には一切の被害を出さないとお約束しましょう。」
「万が一我が国に損害が出た場合はどうする?」
「私がこの手でクヌム王国を滅ぼすというのはいかがでしょうか。皇帝は我が国を目の敵にしているようですし。」
「その後我が国の戦力として私の指揮下に入るということでいいな。」
「はい。もちろんでございます。」
「それでは決定だ。ゼリア皇国皇帝の名において依頼する。魔王軍幹部サリス率いる軍勢を葬り去ってくるがよい。」
「はっ。勇者リアの名に懸けまして、必ず貴国に損害を与えることなく敵軍を葬り去るとお約束しましょう。」
「それではリアよ。自室に戻り即座に戦闘行為ができるよう準備しておくがよい。敵影が確認され次第城壁の鐘を鳴らさせよう。」
「かしこまりました。それでは失礼いたします。」
そんなこんなでサリス率いる軍勢の到着予想時刻までおよそ2時間となった。




