47話 大臣ヤモン
「さぁ、こちらにおかけください。」
そういわれたので座ると大臣は対面に腰かけた。
「申し遅れました。わたくし大臣のヤモンと申します。以後お見知りおきを。」
「わざわざありがとうございまし。こちらも改めて自己紹介を、クヌム王国からの使者として参りました。キルス冒険者ギルド所属のリアと申します。」
「ほぅ、リアさんは冒険者なのですか。どうりで杖と剣の両方を装備されているのですね。」
ヤモンは納得したようにそういうと今度は真剣な表情になって訪ねてきた。
「さっそく本題に入らせていただきますが、今回の救援要請に対してクヌム王国はどれほどの人員を割いてくださったのかお聞きしてもよろしいですかな?」
「細かいことに関してはそちらの封書にすべて記載されているとのことです。基本的に私からは何もお伝えするなと口止めをされているのでお手数ですが封書を開封されてご確認ください。」
「分かりました。それでは失礼して……」
そういって大臣は封書を開け、内容を読んで固まった。そこに記されていた内容は以下のとおりだ。
ゼリア皇国皇帝ゼリア様
クヌム王国とゼリア皇国の同盟に従い、我が国から貴国の救援のために我が国の最高戦力を向かわせる。
我が国から貴国へ向かった者の指揮権はSランク冒険者リアに一任され、貴国の軍勢の指示に従う義務はないものとする。
貴国に送る人員は以下のとおりである。
Sランク冒険者 リア
以上1名。
陰ながら我らも貴国の勝利を祈願させていただく。
クヌム王国国王メルギス
「救援はあなただけということですか?」
大臣が声を振り絞るようにそう尋ねてきた。
「はいそうですが何か?」
「何か?ではないですよ!!相手は10万を超える魔族の軍勢ですよ。それに対して我が国の軍勢はたったの5万だからこそ救援要請をしたというのにあなたひとり来ただけではいくらSランク冒険者だからといって意味がないでしょう。」
「敵軍の詳細を教えていただいてもよろしいですか?」
「はぁ、どうせもうどこを頼っても間に合わないですし、あなたにも戦ってもらうほかないでしょう。わかりました、お教えしましょう。」
そういって悲壮感あふれる様子でヤモンは話始めた。
「まず敵軍の種族ですが、大まかに魔族といっても様々な種類がいます。今回はその中でも空を飛ぶことができる種族は確認されておらず、その他の種族はバラバラです。とにかく確定しているのは相手が空中からの攻撃を仕掛けてくることはないということです。そして魔族の強さですが、弱いものでゴブリン程度、強いものはグレーターデーモンに匹敵すると言われています。低級の魔族であれば神聖魔法であれば一撃で倒すことが可能なのですが、なんせ現代にそんな大掛かりな神聖魔法を使用できる人間などおりませんので……」
「なるほど、それで敵軍を率いている魔王の幹部というのは?」
「名をサリスという女悪魔です。悪魔の中でも最強の種族、世界で唯一のデーモンロードであり、その身にはいかなる魔法でも武器でも傷をつけることができないと言われております。そもそも男が立ち向かうと、彼女の発しているチャームの魔法で戦闘不能にされてしまうので我々としても手に負えないのですよ。Sランク冒険者であるあなたの意見もそろそろお聞きしたいのですがいかがでしょうか?」
「そうですね。まず、サリス以外の者については私が一人で無力化することができます。しかし、サリスは厳しい相手になるでしょう。軍勢がいなくなり、退散してくれたらいいのですが、そうとも限りませんし、ここで確実に仕留めておく方がいいでしょう。そこで一つ提案があるのですがよろしいですか?」
「お聞きしましょう。」




