46話 ゼリア皇国
旅立ちの朝、リアはギルドマスターのもとを訪れていた。
「ギルドマスター、頼んでいた封書はどうなりましたか?」
封書の件というのはリアが依頼を受けた日にギルドマスターに1週間後に援軍が到着すると知らせるものだ。でないと援軍が遅いと言い出していらぬ争いを生みかねないからだ。
「その件はつつがなく。それにしてもリア本当に大丈夫なんでしょうね?とても今から出発して昼頃につくとは思えないんだけど……」
「大丈夫です。とある移動手段を用意しているので。」
「そう……。まぁいいわ。あなたの読み通り、国王の狙いはあなたの力を他国に知らしめることで間違いないだろうからしっかり暴れてきなさいな。あと、地図は渡してたけどどこに向かうのかは教えてなかったわよね?向かうのはゼリア皇国の首都ダルスよ。城の城門にいる兵士にこれを渡せば皇帝ではないかもしれないけれど最低限大臣くらいには会えると思うから。」
「はい、わかりました。それでは行ってきます。」
そういってギルドを出たリアはとりあえず町の門を通り、人目のつかない所へ来た。なぜそんなことをする必要があるのかというと、魔法を見られるのはまずいからだ。そしてリアは透明化の魔法を発動させ透明になると転移の魔法でゼリア皇国首都ダルスへ向かって転移した。
転移した先は町の外だった。運よく町の外しかも人目のないところだったのでそのまま透明化の魔法を解除する。
ダルスはモンスター除けの城壁で守られてはいるものの入り口に衛兵の姿はなく、これでは町の中に魔物が現れてもおかしくないような状態だった。いかにキルスが良い街なのかを再確認しながらリアは城へ向かって歩いて行った。城門までたどり着くとやはり警戒された。
「貴様何者だ!要件がないなら即刻立ち去るがいい!」
「クヌム王国からの使者です。救援要請を受けて参りました。」
「貴様みたいなガキがかぁ?つくならもっとましな嘘を吐けよ。」
「これが我が国の国王から預かった封書です。この封書に押された印を見ても同じことが言えますか?」
「あぁ?」
少し怒り気味の口調でそう言いながら封書を受け取った衛兵は見る見るうちに青ざめると
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!すぐに上のものをお呼びします。」
そういって隣に立って居た衛兵に封書を預け奥へと引っ込んでいった。
「誠に申し訳ない。あいつもあなた様があまりにもお若かったので見た目だけで判断してしまったのでしょう。どうか許してやってくれませんか?」
そう言ってもう一人の衛兵が頭を下げてきた。
「頭をあげてください。あの程度では怒りませんから。」
「ありがとうございます。それであなたはクヌム王国からの使者ということですが、どれくらいの援軍を連れてきてくださったのですか?」
「それについてはそちらの担当者にしか話してはならないと言われていますので。」
「そうですか、それは失敬。おっ、大臣が来られましたよ。」
奥の方から先ほどの男を後ろに連れて偉そうなおじいさんがやってきた。
「そなたがクヌム王国からの使者リアで間違いないな?」
そう聞かれたのでリアはとっさに跪きながら、
「仰せのとおりにございます。」
「わしに対してそんなに固く接する必要はないですぞ。どうぞ気軽に接してくださいな。それでは詳しい話をお聞きしたいので私の執務室へお越しいただけますかな?」
「はい。失礼いたします。」
「それではこっちじゃ。お前は仕事に戻れ。」
そう後ろの男に命ずると大臣は歩き始めた。大臣の後ろを歩きながらリアは人生初の城に心を躍らせていた。大きな建物を前に落ち着かないリアがキョロキョロしていると大臣が、
「我が城は素晴らしいでしょう。装飾もさることながら建築の技術に関しても他国の追随を許しませんからな。」
と言ってきたのでとりあえず
「はい。とても素晴らしいです。」
と返すと大臣は上機嫌になりながら前を歩いて行った。そして執務室につくと、
「ここです。」
そういいながら部屋の扉を開けた。そこは来客と話すためのソファとテーブル、そしてその奥に仕事用であろう質素なテーブルがあるのみの部屋だった。




