44話 国王からの依頼
禁呪の性能を調べるためにアルグダンジョンに潜ってから1週間がたった。リアは特にすることもないので、街の散策をしたり、戦闘や日常生活に役立ちそうな魔法を考えたりと、のんびりと過ごしていた。
そして今日は昨日一日町中を見て回って少し疲れていたので一日中宿でゆっくりしようと考えていた。そんなときに限って厄介事は訪れるものである。
コンコン
リアの部屋のドアを何者かがノックした。もちろんそれよりも前にリアは気が付いていたのだが
「どうぞー」
「失礼します。」
そこに立っていたのはアンだった。
「リアさん、ギルドマスターからお連れするよう申し付けられてまいりました。一緒に来ていただけますか?」
そういわれた時点で確実に厄介事が舞い込んできたとリアは確信した。
「分かりました。支度をするので少し待ってもらえますか。」
そういうとリアは即座に普段使用している武装に着替えた、というよりも変わった。使用するだけですぐに登録しておいた武装に着替えることができる魔法{アーマード}を生み出しておいたのだ。これならば町中で急に戦闘が始まっても対応できるだろう。アンは何が起こったのかわからず呆気に取られているが今は放っておこう。
「よし、準備できました。」
「あ、はい。それではお連れします。」
そういってアンはリアを連れてギルドマスターの元へ向かった。
「隣国のゼリア皇国に向かって。」
ギルドマスターはリアが付くとすぐにアンを追い出しリアにそう言った。
「えっと、詳細を教えてもらってもいいですか?」
「クヌム王国に隣国のゼリア皇国から救援要請があったのよ。表面上は同盟を結んでいるのだけれど、よくゼリア皇国の方から攻め込んできてて正直要請に応じる必要はないと思うんだけど国王がリアを一人で向かわせろ、だそうよ。」
「ゼリア皇国からの救援要請というのは?」
「なんでも魔王軍の幹部が軍勢を引き連れて進行してきているのを確認したとのことよ。リアには話していないと思うけど、魔王の配下の中に幹部と呼ばれる特別強い者たちがいるのよ。今確認されているのは3人ね。で、その幹部の一人が攻め込んでくるから守ってくれだそうよ。」
「なんでゼリア皇国が狙われるんですか?」
「ゼリア皇国は昔から魔王の居城に何回も攻め込んでいるのよ。魔王軍側に損害はないだろうけどいい加減うっとうしくなってきたんでしょう。」
「なるほど。わかりました、ゼリア皇国への地図をください。救援に行ってきます。」
「本当に行くの?あんな国を助けるために。」
「はい。おそらく国王は私という戦力をゼリア皇国に見せつけて今後攻め込んでこないよう牽制するつもりなのでしょうから。行かなければ話になりません。私はこの国で育ち、勇者でありながら自由を頂いています。この国から受けた恩のほんの一部ですが返させていただきます。」
「そう、それではアンに言って地図をもらいなさい。ゼリア皇国は一週間以内に救援をよこせと言ってきているから、ちょうど一週間後につくようにいくといいわ。でないと軍勢をよこさなかったことに逆ギレして我が国に攻め込んでくる可能性があるから。」
「分かりました。それでは7日後に出発するのでそれまでに何かあったらまた呼んでください。」
「7日後ってあなた1日かからずに行けるってこと?距離も知らないのに。」
「はい、それに関しては魔法を駆使すれば余裕です。」
「ほんとあなたって規格外ね。」
なんだかギルドマスターに呆れられた気がした。