43話 時間停止
リアは、ワイバーンに悪いことをしたと少し反省しながら最下層へ向かっていったのだった。
最下層についたリアはダンジョンボスのいる部屋に入る前に魔法の詠唱をしていた。リアがスキル{賭博}で使用可能になる5つの禁呪その中でも最強最大の魔法、その詠唱を。この魔法の消費MPは10000通常時のリアの魔力すべてを使用してようやく発動できるのである。しかし、今のリアはスキル{賭博}の効果が重複してMPの総量が数十倍になっているので問題なく使用できるのである。
しかし、そんなリアでも10分かかる詠唱をしなければ使えないのである。本来は詠唱を知らないはずのリアがなぜ詠唱できているのかというと、スキル{賭博}の禁呪再現の中には禁呪の詠唱の知識を使用者の脳内に刻み込むというものが含まれているためである。
ダンジョンボスにはまだ見つかっていないのでゆっくりと詠唱ができる。そのためリアは10分かけて詠唱を終えた。そしてその魔法をいつでも発動可能な状態にしてダンジョンボスの目の前に姿をさらした。
そこにいたのは、100メートルを超えるであろう大きさの巨人である。
このモンスターの名前は、ジャイアント・ウォーリアー。その名のとおり巨大な武人である。このモンスターは見た目のわりに俊敏な動きと、自身の体の大きさを生かして敵を圧殺してくるタチの悪いモンスターである。しかし、回避さえできればそこまで脅威ではないので見た目のわりにAランク相当でおさまっている。しかし、このモンスターはHPが多く、魔法の効果が薄いという特性を持っているので、リアはあまり相性がいい相手であるとは言えない相手である。
しかし、リアが先ほど詠唱を済ませ、今その力を発動させようとしている魔法はその程度はねのけるほどの力を持つ魔法なのだ。
「禁呪【時間停止】」
ジャイアント・ウォーリアーが殴り掛かってきているのにも動じずに魔法の力を解き放った。
その瞬間リア以外のすべてが停止した。比喩などではなくすべてが停止したのだ。世界のすべてが。これこそがかつて最強と謳われた禁呪【時間停止】の効果。使用者以外の世界のすべての時間を止め、好きな時に再度動かすことができる魔法である。かつて時間停止に勝る力があっただろうか?いや無い。この力の前には時間が存在するからこそ発動しているあらゆる耐性なども無効化される。そのため、これを受けたものは一切の行動と守りを奪われ、一方的に攻撃を受けることになってしまうのだ。
この状態でリアはジャイアント・ウォーリアーに向かって大量の魔力を込めたファイヤーボールを打ち込んで消滅させたのだった。
これでリアの禁呪の確認がすべて終わった。
【地獄の業火】【死者の軍勢】【天界の裁き】【悪魔の呪い】【時間停止】
の五つである。どれも決まれば即死クラスの魔法である。特に【時間停止】に関しては決まってしまえば対抗手段のない最強の魔法である。
この結果に満足したリアはダンジョンの最下層から透明化魔法で透明になってから転移魔法を使用し、キルスの町に帰ったのだった。
しかし、リアはこの時まだ気が付いていなかった。時間停止の中で動いていた存在が他にいたことに。




