4話 魔力100倍の魔法
そんな会話を母親とした後、リアはいつもの丘にやってきた。魔力増大の残り時間はあと3時間。何をしようかと悩みに悩んだリアは、母親に教わった無詠唱の特訓をすることにした。今、リアの体には魔力が満ちている。それならば魔力の流れを感じやすいと思ったからだ。リアは、自分の体に意識を集中させて、初級魔法の「ファイヤーボール」の詠唱を始めた。すると何か胸のあたりから、手の方へ熱いものが流れるような感覚があった。
(これが魔力の流れ!)
リアは後になって知るのだが、これは普段制御できているはずの魔力量と現在の魔力量の差があまりにも大きく、魔力の制御ができなくなり、初級魔法である「ファイヤーボール」でさえも魔力が暴走してコントロールに失敗した結果起こったことである。しかし、今回は、偶然にもそれが役に立ったのである。
「ファイヤーボール」
こうして打ち出された初級魔法「ファイヤーボール」は、丘に生えていた草木を焼き尽くした。幸い、この丘の近くには何もなかったため、それ以上の被害は出なかったが……
魔法を発動させた張本人のリアでさえあまりの威力に呆然としているのである。村の大人たちが見たら、気絶する者もあらわれるだろう。しかし、村からこの状況は確認できていないのか大人たちがこちらに来る気配はない。
しばらく呆然としていたリアだが、我に戻ると、すぐに証拠隠滅の作業に入った。
「グラスフィールド」
中級魔法「グラスフィールド」は、使用者を中心とした直径50メートルの範囲内に草をはやし、それらを自在に操れるというものだ。リアはこれを利用して、何もなかった風を装い、二度と、草木のあるところで火魔法を使わないと誓ったのだった。