39話 逆恨み
「よぉ、ひさしいなリア」
衛兵のラビッシュが声をかけてきた。
「ラビッシュさんでしたっけ?お久しぶりですね。鎧を付けていないようですがもしかしてクビにでもなったんですか?」
「あぁそうだよ。テメェがあんなことしてくれたおかげでなぁ!」
急に怒鳴り始めるラビッシュ、それとは対照的にリアは冷静に返す。
「あっそうですか。で、その元衛兵のあなたが獣人を引き連れてSランク冒険者である私に何の用ですか?」
ラビッシュの隣に立っているローブを着た人物は一切しゃべっていない。しかし、スキル{創造神}のおかげで鑑定せずとも相手が何者かわかるのだ。
「Sランク冒険者だとぉ?ほらを吹くのも大概にしろよ。お前なんかがSランク冒険者なわけがないだろうが。やっちまえ、獣王ビスター!!!」
「承知」
そういうとローブを脱ぎ捨てとてつもない速度で襲い掛かってきた。
「ソニックムーブ」
慌てて魔法を発動させビスターの攻撃をかわすリア。獣王というだけあってかなり強いようだ。
スキル{創造神}の効果で獣人について分かったことは、奴らには極大魔法以外の魔法が一切効かず、とてつもなく素早い。そして攻撃力も一流というとんでもないことだった。
リアは迷うことなく極大魔法の詠唱を始めた。もちろんビスターも攻撃を仕掛けてくるがそれをすべてかわしながら詠唱を続ける。そして詠唱を終えると、一気に距離を取り、
「極大魔法【グラビティノヴァ】」
ビスターのいる位置のみに結界を張り魔法の効果を発動させた。
1分ほどの空白ののちそこには無傷で立つビスターの姿があった。
「残念だったな。俺には極大魔法であろうと効果はない。おとなしく俺に殺されるんだな。」
そういうと再び襲い掛かってきた。
極大魔法が効かないのでは対処法がない。あのあと一撃剣で入れてみたのだが、全く効果がなかった。魔法も物理も攻撃が一切通らなかったのだ。そもそもなぜこんな強い奴がラビッシュに従っているのか気になったので聞いてみることにした。
「何であんな奴に仕えてるの?」
「我は召喚されし眷属。召喚者に従属するのは当然であろう。」
正論で返された。というかラビッシュはこんな化け物を召喚できるほどの力を持っていたことになる。あの時、そのまま引き渡したのは間違いだったかもしれない、などと考えていると、
「何か考えているようだが、お前では俺に勝てん。あきらめろ。」
そういいながら攻撃を仕掛けてくる。
確かに現状のリアではビスターに攻撃を通すことができない。しかし、あのスキルなら
「スキル{賭博}!!!」
{即死}
そう表示された。そこで
「対象、獣王ビスター!!」
するとビスターが急に動かなくなり倒れた。ビスターは即死に対する耐性を持っていなかったようだ。相手を殺してしまって少し後味が悪いが、勝つことができたし良しとしよう。
とりあえず、極大魔法を使ったあたりから気絶しているラビッシュを連れてキルスの町へ戻ったのだった。
それからは、門のところにいた衛兵にラビッシュを引き渡し、慰謝料ということで金貨5枚を受け取り、とにかく平謝りされた。戦闘で疲れていたこともあり、そうそうに宿屋に戻ったリアは早めに夕食をもらい眠りについたのだった。