34話 国王との会談
「そなた、名は何と申す。」
「リアと申します。」
「リアよ、これからそなたの能力をわしの{神眼}で見させてもらうが、異論はあるか?」
「ございません。」
リアは前世の知識をフル活用してそれっぽい言い回しで答えていた。おそらくそれがなかったら不敬だと切り伏せられていたことだろう。
「うむ、これは!」
「どうかなさいましたか?王よ。」
側近がそう問いかける。
「いや、あまりにもとてつもない能力に少し驚いてしまっただけだ。気にするな。」
小声でそう返す王。そして今度は声を張って
「ニケ村出身の少女リアよ。そなたに勇者の称号を授けるとともに冒険者として最高ランクSランクを与える。国からの要請がない限りは冒険者として自由に暮らすがよい。しかし、魔王との戦闘行為を禁じる条約を結ばせてもう。以上だ!」
そう言い放ち王が去っていった。リアとしては何が起こったのかよくわからなかったが、とりあえずSランク冒険者にはなれたらしい。そのまま領主の屋敷の出口に案内された。出ていく前に騎士の男に、
「王からギルドマスターへの封書だ。中身は見ずに必ず届けるように。」
と言われ、封書を渡された。とりあえず、封書を届けるのと、冒険者についての説明を受けるために冒険者ギルドへと向かったのだった。
ギルドについたリアは受付嬢のアンにギルドマスター宛ての封書を預かっていることを伝え、ギルドマスターの部屋に通された。
「これ、王様から預かった封書です。」
「確認するわね。」
その中に書かれていたのはおおよそこのような内容だった。
国王メルギスの名において少女リアを勇者と認める
なお、勇者リアは魔王との戦闘行為を禁じるものとする
同時にリアにSランク冒険者の称号を与える
クヌム王国を含むいずれかの国からの招集がない限り冒険者として暮らすのを認める
勇者本人とこの内容を知る要人はこのことについて一切の口外を禁ずる
「リア、あなたは勇者として国王に認められたわ。ただし、両親であろうとパーティメンバーだろうと誰にも自分が勇者であることを言ってはいけないわ。あと、万が一魔王と接触するような機会があっても戦闘しないこといいわね?」
「はい!」
「それじゃ、アンのところに戻ってランクの登録と依頼の受け方などについて教えてもらいなさい。我がギルドには現在Sランク冒険者はあなただけ、というよりSランク冒険者はこの国で3組目なの。つまりあなたは登録した瞬間からこのギルドのエースになるわ。頑張って頂戴ね!」
そういわれ、リアは初めて冒険者になるということについて実感が芽生えてきた。これからはどんな生活が待っているのか胸を躍らせながらアンのもとへ向かったのだった。