最終話 これまでの人生、そしてこれからの人生
西方諸国襲撃から1週間が経った。結果はもちろん言うまでもない。
襲撃1週間前に帰還していた魔王城を攻めていた1億人の軍勢も含め、軍隊の総数は100億だ。こちらとしても、まさか女子供を含む全国民を徴兵してくるとは思っていなかった。10か国の全国民の兵力100億。確かにそれだけあれば1億くらい派遣しても余裕がありすぎるくらいだ。ただ、それを統制できる天帝とやらが優れていたのか恐怖支配がうまくいっていたのかがわからないが、女子供も最低限鍛えられ、統制された動きをしていた。
もちろん本来の姿で空を飛んでいる私が相手なので地上戦を前提とした部隊編成では意味をなさなかった。できるだけ殺さないよう足や腕を狙って無力化していったものの、天帝が全員が死んでも降伏はしないと宣言をした時点でこちらもあきらめた。この連合軍の塀の命はすべて天帝が預かっている。それがなくなっても降伏しないと宣言したのだ。こちらとしても一般の人々を救う手立てはない。
気絶させてそれっぽい雰囲気にすることもできたが、厄介なことに天帝が鑑定と、{傀儡}というスキルを所持していた。
{傀儡}は自身の配下を自在に操ることができるスキルだ。その数にも制限がないし、自律行動させることもできる。気絶に関しては鑑定でばれてしまうし、配下に生き残りがいれば{傀儡}の効果でばれてしまう。それに天帝自身の命が失われるとき、国民1人を犠牲に生き残ることもできるらしい。つまり、国民が生き残っている限り不死身。
しかも、ミョルニルが意味をなさなかった。ミョルニル装備の状態で天帝を攻撃した際に明らかに命中したはずなのに無傷だった。それに戦場の全員を気絶させると、天帝がスキルの効果で動かして見せた。もちろん天帝はミョルニルの効果範囲の中だ。なぜそんなことができるのかはわからないが、一つだけわかったのはここにいる全員を皆殺しにしなければならないこと。
そこからは虐殺だ。禁呪【地獄の業火】を10か国すべての領土を覆うように超特大範囲で発動させ、建物、インフラ、自然、人のすべてを焼き尽くした。ほかにも方法はあるけれど、これが一番早い方法だった、そしてここは人間が住むべきでない場所にしたかったのだ。あえて人間が住めない環境にして魔獣や魔物の生活圏を作っておきたかった。
それで西方諸国に関してはすべて終わりだ。それからはすぐにクヌム王国に転移して詳細を説明し、クヌム王国経由で今回の事件の説明、魔王の領土に西方諸国の領土を加えて正式に国家「魔王国」として認める。等のことが決定された。クヌム王国は世界の中でもかなり大きな権限を持っているらしい。今回のこともほぼ独断で決まってしまった。
アランやハンゾウの回っていた地域もマリダに侵されていた国も含め、すべて話が付いたらしい。不可侵までの国も多かったが、仕方がないかな。
これで本当にすべて解決だ。この世界で私たちの地位も確立させ、問題の火種になりうるものもできるだけ排除した。これでみんな仲良く幸せに暮らせそうかな。
でも、それには一つだけ足りていないものがある。
私は久々に実家に戻ってきていた。今はアランも住んでいないため、村の人たちに管理をお願いしていた。その中に残されているのはいまだ生活感の残る部屋と、一つの棺。その中には一人の女性の遺体がきれいな状態で保管されている。
この世界でかつて冒険者として名を馳せた彼女。名前はリリス。私の母だ。彼女を生き返らせないでどうやって幸せに生きて行けっていうんだ。私はわがままなんだ。なんとしても蘇生する!
この棺は魔力を通さないように作ってある。魂がこの中に残っているはず。魂は魔法などに使用するものとは違うけれど、魔力を含む。この世界のシステムに干渉できる今の私なら絶対にできる。
棺内の魔力を集めて、一つの塊にする。もちろん多少失われている分は私の魔力で補填するしかない。欠けているのは生体の情報を管理する部分。つまり蘇生に成功すると魔族になってしまう。まぁ、仕方ないか。
肉体の治癒は済んでいるから、治癒した魂を体内に戻し、目覚めさせなければならない。蘇生自体が世界のシステムで拒まれているけれど、権限で強制的にレジストする。そして蘇生の魔法を発動させた。
頭には角が生え、背中には漆黒の大きな翼が生えた。風貌はかなり若返ったかな?というか、私が幼いころよりもさらに若い感じがする。お父さんもそうだったし何も不思議じゃないか。
「リア?」
私が棺を事前に開け、魔王城の玉座の間まで転移していたのでかすかな声ではあったが聞き取ることができた。
「うん。そうだよ。お母さん。」
私は正直泣きそうだけれど、必死に涙をこらえている。
「何か迷惑をかけたみたいね。」
「迷惑なことなんて一つもなかったよ。」
それから私はお父さんも呼んで、状況の説明とかいろいろをした。少しすると、意識もはっきりして感覚も戻ってきたのか、角と翼に驚いていた。
それからみんなにお母さんの紹介とかいろいろして1日が終わった。
お母さんも生き返ったし、これで心置きなくこの世界やほかの世界を堪能できるね。
ここまで話したのが私のこれまでの人生。そしてこれから私たちみんなでつくっていく楽しい時間がこれからの人生。
転生してチートになった少女がチートスキルを得て勇者になり、魔王、そして神にまでなる。そんな人生だ!




