323話 【浄化の神光】
マリダと戦い始めてから1週間が経過した。私は楽しむことが目的ではあるが、相手としては主人を殺されて復讐として戦っているわけだ。お互いにそう簡単に終わらせるわけにもいかず、そもそもお互いに決定打がないので終わりようがなかった。私としては楽しいばかりなので全く文句はない。それに決定打を一つ思いついてはいるけれど、それを使っていないにすぎないだけなのである。このまま、西方諸国に襲撃をかける前日まで戦いを引き延ばして西方諸国に向かう、それが今の目標だ。
今は何となく思い付きでつくってみた日本刀を使いこなそうと頑張っている。うまく力が伝わらず折れてしまったり、うまく切れなかったりして中々に難しい。使いこなせればかっこよさそうなんだけどね。
それにしてもマリダはなぜ退避しようとしない。私を倒せないことは明白なはずなのに。もしかして倒されることを望んでいる?その可能性はあるけど、もうちょっと付き合ってもらわないとね。
それからさらに10日が経過した。お互いに取り決めて時々休憩をはさみながら戦い続けていた。なんだか少し仲良くなれた気がする。まぁ、ブラフマーの関係者だから生かして返すつもりはないけどね。
日本刀の扱いにもなれたし、西方諸国の襲撃まであと3日だ。よくよく考えたら前日だと、リーンとカインの方の最終確認が間に合わないかもしれないしもう終わらせて戻ろうかな。
「マリダ、ここまで楽しませてもらったけど、これで終わりにさせてもらうよ。」
「私を倒せる方法があるとでも?」
「うん。」
私は空間収納からあるものを取り出す。ブラフマーの作ったものだからあまり使いたくはないけど、これを使うしかないのも事実だ。背に腹は代えられないし。
「それは、ブラフマー様の神器・ミョルニルか。」
「知ってるんだ。ってことは効果も知ってるよね。」
「あぁ。スキルと魔法の効果無効。それなら私を倒せるな。」
「うん。最後に言い残すことはある?」
「いや、そんなものはないさ。ブラフマー様のいない世界に存在する意味もないしね。」
「そう。もし死後の世界があるのならそこでブラフマーと再会できるといいね。」
「そうだな。リア殿が来るのも待っていてやるからな。」
「会いたくないものだね。それじゃあ、さようなら。【浄化の神光】」
私が独自に開発した、魔族とアンデッドにのみ有効な浄化魔法。魔族は特に浄化されるとき苦しみを味わうことになるが、この魔法は温かな光に包まれているような感覚の中、浄化される。苦しみを与えずに相手を倒す魔法。今回みたいなときに必要だと思って作っておいたのだ。
マリダも倒してしまったし、魔王城に帰ろうか。
「リーン、ただいまー。」
「リア!えらく時間かかったじゃないの!2週間以上だなんてそんなに手ごわかったの?」
「いや、厄介ではあったんだけど、途中からは西方諸国に行くまでの暇つぶしにと思って、いろいろ試してみてた。」
「それなら連絡くらいしなさいよ。心配したじゃない。」
「ごめんごめん。アンチデューンとディアもいるみたいだけど、もしかして南方諸国の方はもう終わっちゃった?」
「はい。どの国家も不可侵条約を結んで終わりました。国交に関しては東方の国を経由してになるから直接の国交を結ぶ気はないと。」
「そう。まぁ、十分すぎるくらいかな。トラブルの火種がないことは良いことだし。北方の方はもう少しで終わるみたいだし、あとは東西だね。東方はクヌムが代表だから多分大丈夫だろうけど、西方は最悪国墜としするかもだからそのつもりでいてね。あと、その間私暇なの嫌だから、私とリカの役割入れ替えるね。もちろんここにいないメンバーから見たらわからないように見た目も入れ替えるから。敵国には私だってばれないと思う。」
「それは別に構わないけど、国墜としするってなった時にやりすぎないようにね。それだけが心配だわ。」
「大丈夫!加減は分かってるから。」




