321話 最硬の魔族
「なるほど。先ほどの発言は揺さぶりではなかったわけか。」
周囲で観覧していた貴族たちは逃げまどい、私とマリダは対峙していた。これでマリダも私が格上であることは分かったはず。できれば殺すのは避けたいんだけど、態度的に厳しいかな。
貴族たちが逃げていくのは闘技場内で戦いを始めようとしていた2人が同時に魔族へと変身したことが原因だ。私は魔王と紹介されていたからまだしも、大臣が魔族だなんて誰が考えただろうか。
数分後にはハンゾウとお父さん以外に観覧席には誰もいなくなった。
「では改めて自己紹介だ。私はマリダ。初代の魔王様に仕えし最硬の魔族だ。貴様であろうと私に攻撃を通せないだろうよ。」
この「さいこうのまぞく」は「最高の魔族」ではなさそうかな。魔王を最高と考えている以上自分を最高と名乗ることはないはず。まぁ発言的に「最硬の魔族」ってところか。バカバカしい。私の方が固いに決まっているでしょ。鑑定もできるようになったみたいだし見てみようか。
マリダ 魔族 22893歳
スキル{物理攻撃無効化}{魔法攻撃無効化}{擬態}
Lv.3261
HP ∞
MP 1000000
STR 100000
VIT 10000000
RST 30000000
AGI 400
魔法:固有魔法
称号:特異存在
特異存在?突然変異的な何かかな?固有魔法はどんなものかわからないし、スキルがどれも厄介だ。{擬態}は戦闘向きでないけれど、ほかの2つに関しては常時発動だし、そもそも年齢もレベルもとてつもない。なぜこんなのがこれまでこの世界で発見されていなかったのか気になるレベルだ。超越存在へと至ることなく無限のステータスを得ていることもはっきり言って意味が分からない。それにこいつなら私が倒した魔王キョウも倒せそうなほどだ。それをしなかったのはスキル{魔王}が未知数だからといったところかな。スキル{魔王}の魔族への優位背は相当に高い。それでも互角に渡り合えそうなくらいにこいつは強い。
「あなたお強いんですね。私は無理でも先代の魔王くらいなら倒せたんじゃないですか?」
「そうかもしれんな。だが私は先代の魔王、いやこれまでの魔王達に対して何の不満もなかった。これまでの魔王はしっかりと魔王としての役目を全うした。魔王として世界の脅威となり勇者に倒されて破滅する。それが魔王というものだ。それがなんだ貴様は?世界中を平定しようとしているではないか。それをしていいのは魔王と倒してなおかつ魔王に堕ちることのなかった真の勇者にだけ許される特権であろうが!」
は?
はっきり言って理解ができない。なんだかブラフマーがしそうな発言な気がする。もしかしてどこかでつながっていたりするのか?さっき言ってた初代魔王ってのがブラフマーが憑依した肉体、もしくはブラフマーの分身体の可能性はありそうかも。それはともかく面倒であることに変わりはない。
「なんですかその理論。そもそも私は力を手に入れるために魔王になったのであって決して堕ちたわけではありません。人間を憎んでいるわけでもありませんし、そこで手に入れた力も私の願いをかなえるための力として必要だったに過ぎません。私は魔王ですが、それと同時に勇者でもあります。この世界の秩序を乱そうというなら私が止めて見せます。」
「この世界について語るな!それをしていいのはあのお方とあのお方の臣下だけだ!」
うん、確定だね。こいつが言うあのお方、ブラフマーで間違いない。
「そのあのお方っていうのはブラフマーのことかな?」
「なぜその名を!?」
「なぜって、この間ブラフマーの本体と戦ったんだよね。私からすれば復讐ってところかな。」
「あのお方と戦って貴様がここにいるということは………」
「うん、殺したよ。あなたが仕えていたのはブラフマーの宿った別の肉体ってところかな?まぁ、そんなこと関係なく、奴は死んで、今この世界は私が管理している。それは紛れもない事実だよ。」




