315話 終戦、そしてまた戦争
ブラフマーを撃破し、私たちは念のため警戒しながら数日間過ごしていた。もともと存在していたたくさんの世界のおかげで保たれていた均衡が今にも崩れそうな状態だったので私とリーンは新たに世界を創ることでとても忙しかったけれど、そんなことを言っても何にもならない。
3日間休まずに創り続けてようやく安定したようで世界間での均衡は保たれている。そう考えるとブラフマーってとんでもなく優秀だったんだな。あれを全部ひとりで管理していたなんて。
〈基軸世界〉の管理権限は私に移り、結界が張られていない限りすべての世界に干渉できるようになった。ブラフマーはこれを悪用してほかの創造神たちを配下にしていたようだ。
そして世界の管理権限自体が私に移ったことでこれまでずっと謎だったことが一つ解決された。
スキルや名称、魔法などについていた括弧の種類についてだ。世界の管理権限を持つものがそれらについて設定できるらしく、世界のシステムに干渉するものが【】、スキルが{}、その他の名称が〈〉や《》だったらしい。細かい違いはあるらしいが、私にはわからないので魔法は【】、スキルは{}、固有名詞は〈〉で統一することにした。つまり【創造神】も創造神という表記に変わったわけだ。
その他のこの席アの管理システムについては一切いじっていない。というよりいじることができなかった。前世でいうところのプログラミングのような形式でつくられていて私には何のことなのかあまりわからなかった。括弧の部分だけは分かりやすくされていたけれど、いつか誰かに引き継ぐことまで想定していたんだろうか?
ほかの創造神たちは全員殺した上にその世界も残っていない。もはやなかったものとして扱うしかないだろう。これからは私が作り出した世界と〈基軸世界〉の管理を私がして、リーンが作った世界の管理をリーンがする。そして創造神が新たに生まれたらその人も仲間に引き入れてワイワイやっていきたいね。
まぁ、まだすべてが解決したとは言えないし、やることはいっぱいあるから今後について妄想を膨らませるのはそのあとになりそうだね。
「みんな、無事にブラフマーは撃退できたけれど、彼が残したこの世界への影響はまだ残っている。それを片付けるまでが戦いだからね。気を抜かずしっかり対処していくよ!」
そう。東、北、南にある各国からの信頼の回復、西方諸国連合への対処、ニケ村はこの世界で唯一私に守られているけれど、今後ほかの世界から信仰がないとも言い切れない。そのためにも防衛線の確立、各国との連携が必須になってくる。
「そうね。特に西方諸国連合が面倒ね。諜報部隊からの報告だと、大規模な軍隊を率いてこちらに向かってきてるらしいわ。その数1億だそうよ。」
リーンが西方諸国連合についての詳細を教えてくれる。
「さすが大国10か国分の軍事力だね。それでも一部といったところだろうね。まぁ、私がルールと提示したうえで戦争に引き込んだんだし、こちらもそのルールに乗っ取っていこう。」
「ルール?」
「あれ?話してなかったっけ。ブラフマーとの戦争の前に西方諸国連合の使者を名乗る奴らが来たんだよあえて魔王じゃないふりをして出迎えて各国の代表者にだけ、伝言をして帰らせたんだよ。1か月半以内にこの城を落とすか、1か月半後にこっちから送る刺客を撃退できたらそっちの勝ちでいいって。伝えとくとは言ってたけど、その返答はしないって言ってたよ。宣戦布告してきたしそれでいいかなと思ってね。」
「確かに。相手にもメリットがある以上その条件は飲むだろうな。それに勝ち負けの基準もシンプルだ。こちらとしてもやりやすい。」
カインも私の行動に賛同を示す。
「それで、それから3週間くらい経ってるから、そろそろ攻め込んでくるころ合いだね。まぁ、結界は越えられないだろうし、無視していいって配下達にもあとで伝達しておいて。万が一結界が破られるようなことがあったら私が出向くから。みんなはこっちの軍を退避させて隠しておいて。相手がこっちを舐めてくれた方が隙ができるし。」
「それはもちろんなのですが、資格として送り込むのは誰にするのですか?数億人の軍隊がいるとなると攻め落とすのは大変でしょう。」
アンチデューンの意見、私も同じ考えだ。
「そうなんだよね。まず、万が一のことを考えて、三魔将以下は行かせることができないかな。敵にどんなのがいるかも確定してないから、最低ラインが神格階級だね。そして敵の数的にお父さんも論外。数億倒すのに時間がかかりすぎる。だからリーンに行ってもらいたいところではあるんだけど、リーンにはほかにやってもらいたいことがあるんだよね。」
「やってもらいたいことって?」
「リーンとカインは東方諸国の代表国のクヌム王国に、アンチデューンとディアは南方諸国に、ハンゾウとお父さんで北方諸国に行って今後の関係について話してきてほしいんだよね。南方と北方は国同士の連携が強いわけじゃないから1ヵ国ずつめぐってもらうことになるけど。それと、クヌム王国組と南方諸国組にはハンゾウの分身体をついていかせようと考えてる。」
「なるほど。同時進行でほかの国との交渉も済ませてしまおうということね。」
「そう。万が一私が必要な案件だったら呼んでくれればすぐに向かうから。」
「でもそれだと西方諸国への派遣はどうするんだ?ほかに適任のやつが誰もいないけどよ。」
お父さんがそう言ってくる。確かにそうなんだけど、みんなはまだ知らないんだよね。
「それについてはちゃんと考えてある。ちょっと待ってね。」
(リカ、ちょっと玉座のままで来てくれる?転移しないでね。)
(もう扉の前にいるよ。意識共有してるんだからわかるに決まってんじゃん。)
さすがリカ。行動が早いね。そしてリカが入室してくる。みんな驚きのあまり声も出ない感じかな。
「みんなに一人紹介するよ。私の分身体に私の並列意志を移植した存在、いわばもう一人の私。名前はリカだよ。」
「みんなよろしくね。リアと区別できるように髪型は近いうちに違う感じにするからそれまでは頑張って見分けてね。」
「並列意志の移植って?そもそも並列意志って何?」
リーンが早々に突っ込んでくる。
「並列意志っていうのは魔法発動のサポートだったり同時発動だったりをできるようにする、いわばもう一人の自分の事。自分の中にだけ意識があって、その声も自分にしか聞こえないよ。」
「なるほど、でそれに分身体の体をあげたと。」
「そういうことになるね。万が一体を破壊されても精神を砕かれていなければ私の中に戻ってくるから私が生きてる限りは死なないかな。その逆も同じ。」
「そうそう。ってことで私が西方諸国連合に出向くってことでいいかな?」
リカが全員にそう尋ねる。今は服も違うしみんな見分けられてると思うけど、反応がない。それだけ混乱してるってことかな。
「リカとリアって強さのバランスはどうなの?分身にスキルは引き継げないはずだけど。」
「リカにスキルと魔法の管理をさせてたからスキルと魔法は2人とも所持している状態になってるね。スキルの複製もできるようになったからどっちかが死んでも全く同じ強さで復活させることができるよ。」
「本当に化け物ね。あなたたち2人がいたと考えればブラフマーに勝てたのも納得だわ。」
リーンがまた呆れている。最近呆れられてばっかりな気がする。まぁそんなことばっかりやってる私が悪いんだろうけど。




