314話 決着
私が発動させた{次元断裂}、そしてリカが発動させた{空間断裂}。この2つを同時に発動させることでスキルが重複して発動する。そのスキルこそが{重複次元空間断裂}。
この技が発動すると、連鎖的に{次元断裂}と{空間断裂}が発動し続ける。まず、{次元断裂}がトリガーとなり{空間断裂}が一瞬発動する。その一瞬の{空間断裂}がトリガーとなり{次元断裂}を発動させる。
術者が停止させるか、一度でも命中しないかのどちらかの条件でこのスキルは停止する。ただ、これらのスキルは空間を指定するものではない。対象を取って、その対象に対して効果を発揮するスキル。すなわち、相手の体が崩壊して命中しなくなるまで延々と攻撃を加え続ける。
ブラフマーもそれに気が付いたのだろう。すぐに肉体を崩壊させ再構築に取り掛かる。しかし、ブラフマーは重要なことを見落としている。
それは{重複次元空間断裂}の効果が継続している状況で、私たちは自由に行動することができるという点だ。奴は常に一人で戦ってきているため、この合体スキルの詳細を知らない。あくまでも私たちが連続して{次元断裂}と{空間断裂}を使用していると考えたようだ。それならば肉体を崩壊させるという判断は正しい。しかし、私たちは自由に行動出来て魔法の発動、別のスキルの同時発動も可能だ。
つまりこの場合のブラフマーがとるべき行動の最適解は、スキル効果が施される部位を自切することで斬撃を命中させないようにすることだ。スキルの停止条件を知らないブラフマーがそんなことを知るはずもない。
今あいつは血と魂だけの状態だ。今がチャンスだ。肉体が再生するまでの一瞬の間。この瞬間にすべてをかける。行くよ、リカ!
「結界魔法{魂の牢獄}」
「結界魔法{魄の牢獄}」
「「複合結界魔法{魂魄の無限牢獄}」
再生が完了すると同時に結界の効果が起動し始める。これであいつは出てこれないはずだ。{魂の牢獄}は魂を結界内に閉じ込め、その権能の一切を剥奪するもの。{魄の牢獄}はその肉体版だ。それが重複してかかることにより、魂と肉体を完全に封じ込め、その檻に触れる、もしくは干渉しようものなら無限にとらわれてしまう。ここでの無限というのは魂が何もない虚無の空間に送られ、無限の時を与えられ責苦を受け続ける。そして精神が崩壊することで死に至る。
これだけ強力な魔法なので使用条件があった。まず、相手と同格以上のものが2人いること。これは私とリカがブラフマーと同格なので達成できた。そしてステータス限界を突破していること。そして最後、相手の肉体が消滅していること。途中で再生されることに関しては問題ない。
つまり、何とか作り出した隙に最強の結界の中に閉じ込めることができた。
「この程度の結界で俺を止められると思うなよ。」
おっと、思ったよりあっさりと触れてくれたね。無限にとらわれて死ぬだけだというのに。まぁ、これまで苦しめた人々の分苦しんで死ぬがいい。
この世界の所有権も私に移ってきたことだし、さっさと殺してしまおうか。
まずは【基軸世界】の魔王城に転移。そしてスキルの効果で【ブラフマーの世界】の時間の進みを100億倍速に。世界の崩壊は止められないだろうからどうでもいいけど、念のためブラフマーの死亡だけ確認しようかな。
【ブラフマーの世界】を壁一面に映し出す。そこには中央に映る檻と、その中で横たわって悶絶するブラフマーの姿が。まだ死んでないのか。さすがにタフだね。まぁ、タフだろうと何だろうと関係ないけど。
時間の加速をしてから死ぬまでに30秒かかった。ブラフマーは肉体が崩壊し、魂も完全に消失したことが確認できた。30秒、つまり3000億秒間、およそ9500年責苦を受けたのだ。私としても倒せて満足だし十分かな。9500年もの間苦しんだ末に死んでいったんだ、奴の犠牲になった人たちへの手向けとしては十分だろう。
何はともあれこれで今度こそ本当に私たちの勝利だ!




