296話 〈個人世界〉の闇と未来への希望
無限に広がっているように思える暗闇。これが私の意識の中の世界。心の中とも言い換えられる世界だ。この世界は私とリカ以外の者による一切の干渉を禁じているから、【創造神】であろうと手出しできないし、情報を得ることもできない。万が一結界を超えてこちらの情報をすでに得ていたとしてもそれを超えてやればいいだけのことだ。
さて、この世界なら考え事に集中できる。概念突破のさらに上がないかということに関しては解明しておかないと、【創造神】を相手にするのには不安が残る。【創造神】もその段階に至っていない可能性もあるけれど、それは限りなく低い可能性だし、その段階が存在しないという可能性自体低い。{世界の理}の権能を用いても、これらのことは知覚することで初めて情報を得られるので、そもそも知覚していないので効果を発揮できない。
この闇の中でさえも最近ようやく知覚して今初めて入っているところだというのに、どこまで脳を酷使すればいいのやら。
この空間の名前は〈個人世界〉。それぞれの人の中にある世界だ。世界といってもあくまでも存在しない空間であり、その人のみが干渉でき、本人の許可なく入ることはできない。その中ではすべてが本人の思い通りに行く。戦闘中他人を招くことで優位に立てるものの、この空間への攻撃はたとえ空気に触れただけでも本体への精神ダメージになるので他人を入れることにメリットがない。それに、すべてが思い通りになるとはいえ、自身の攻撃でも傷はつくため、はっきり言って使い物にならない。ただし、一切干渉されなくなるうえに時間の流れや空間内での物質なども自由自在なので考え事や実験をするのには優れた空間といえるだろう。
ここについては少し置いといて、一度概念突破について整理してみよう。
・無限のさらに上位に位置するステータス。
・ステータスカード等には◆と表され、不完全なものは◇で表される。
・概念突破状態のステータスは自在に操ることができ、最大値はないとされている。
・しかし、最大限に設定することはできるのでその最大限は上限といえる。
・最大限というものが何なのかさえ分からない状態である。
・概念突破のさらに上位の何かが存在している可能性がある。
・神の名を冠する者であってもこの状態のステータスが一つあれば十分に力のある部類である。
こんなところかな。正直概念突破でも十分おかしいけど、最大値が存在するものが果たして無限の上位互換といえるのだろうか。最大の問題はステータスだ。ステータスという概念上、数値が存在してしまっている。今の時点ですでに数値で測れないほど膨大なものになっているけれど、あくまでもそれはステータスという制度の中で処理できる大きさのものだということだ。
つまり、概念突破を超えるにはステータスという概念を捨てなければならない。物差しで測ることのできない強さ。まさに規格外。それを自分自身で体現しなければならない。魔力を練り上げて今いるこの空間私の心の中に開放する。
その瞬間、私の周囲に広がっていた闇は消え、どこまでも続く草原が広がっているだけだった。その草原は明るく希望に満ち溢れている。そんな雰囲気を感じさせてくれる。私がこれまでいた闇は、【創造神】への恨み、そしてその先の未来への不安。それを体現したもの。それに対して、今いる明るい草原はこれからの未来に希望を持ち、自分自身に自信を持つことができたその心の中をそのまま映し出した空間だ。今ならできそうな気がする
ステータスを超えることができる。そう確信した私はそれを形にしようとした。しかし、それはかなわず、私は目を覚ました。




