268話 残酷な現実
リーンに魔力を流し込んで約1分。玉座の間にはすでにアンチデューンが到着し、後の2人もこちらに向かっていた。皆、魔王城内にいたので、というより、万が一のことを考えて、魔王城の結界から出ないよう指示していたのですぐにこちらに来ることができた。
リーンも目覚め、少しして全員が集合した。
「みんな集まったね。今呼び出したのはみんなに想像魔法について教えておこうと思ってなんだけど、それぞれ想像魔法についてどんな印象を持ってる?」
「俺は、魔法を作って発動できるし、とても便利なものだと思っている。そもそも魔法を創るということ自体がこれまで考えたこともないことだったからとても重宝している。」
「私も同じ認識です。作った魔法をストックできるのでよく使うような魔法を普段から開発するようにしています。」
「私も同じかなー。それ以上でもないし、ものすごく便利だけど、いざというときに対応しきれないのが玉に瑕かな?」
リーン以外の3人がすぐに返答する。まぁ、そうだよね。私もつい最近までその認識だったんだし。
「みんなにつかんでほしいのはそこじゃないんだ。想像魔法にはもっと上位の権能がある。多分リーンはすぐにつかめるんじゃないかな?今ここで新しい魔法を創らず、想像魔法って唱えるだけで、炎を出してみて。弱めでね。」
「やってみるわ。想像魔法」
すると、弱めの炎が手のひらから射出された。やはり世界を創造できたしイメージをつかむのが早い。想像魔法はイメージがすべて。イメージしたことを具現化する。その感覚、つまり、その場で魔法を創り出す感覚さえつかめればできるようになるはず。
「今みたいに魔法をイメージするのと、具現化するのを同時に行う。そうすることで新たに魔法を創らないでもすぐに使いたい魔法の効果を使いたい威力と制度で使うことができる。私たち5人はみんな実質無限の魔力を有しているから、魔法の効果をどれだけ高めても問題はないし、これを習得できればもっと強くなれると思うよ。リーンは【創造神】になったことでイメージと具現化の感覚を体でつかめてるからすぐにできたと思うけど、ほかの3人は練習あるのみかな。」
「なるほど。それなら確かに想像魔法という名前にも納得がいくな。イメージと具現化か。なかなかに難しそうだが、鍛錬を積むことにしよう。」
「鍛錬を積むのは良いけど、この城の結界からは出ないようにね。子の結界は私の魔力回路と直接結んでるから【創造神】の影響を受けることがないから、大丈夫だけど、外に出たら何をされるかわからないから。実際に結界を張っていたニケ村は回路と直接結んでいなかったから被害を受けたし、そのせいでお母さんが死んだ。」
「ちょっと待って、リリスが死んだの!?蘇生は?もちろんしたのよね?」
そういえばリーンには話せていなかったっけ。
私は首を振りながら残酷な現実を告げる。
「無理だった。【創造神】が村人全員をアンデッド化したんだけど、お母さんだけ魂を消費して上位種族に進化させられてたんだ。肉体は元に戻せても魂の復元なんてできない。すでに失われていたものは戻せないんだよ。もちろんそういう魔法もある。でもそれはあくまでも魂を体から失われた時点の状態で保管できてないといけない。そんなことはできてないから蘇生はできなかった。」
リーンは膝をついてうなだれた。
「それでも、村人たちを二度と同じ目に合わせないように【リアの世界】に村ごと移動させたよ。お母さんの遺体もきれいな状態で時間の経過を止めて保管してある。お父さんだけはこっちの世界にいるけど。」
「何でアランはこっちに?」
「リリスの仇がとりたいから進化させてくれって。私も元々進化してもらって二度と【創造神】に手出しされないようにするつもりではあったんだけど、まさか戦いたいって言いだすとは思ってなかった。私やリーンと同等になれたら【創造神】との戦いに連れていくつもり。逆にそのレベルまで到達できなかったらアンチデューンやカイン、ディアでも連れていくことはできないかな。」
「そう、やっぱりアランはリリスを愛してやまないのね。」
「そうですね。それは私も同じなので【創造神】にはこれ以上ないほどの憎悪を抱いています。それでも今のままでは敵わないからまだ戦いを挑んでいないんです。できるだけ早くさらなる強化の方法を見つけたいんだけどね。あ、アンチデューンたちは戻ってもいいよ。」
私がそういうと、ここにいるのも邪魔になると判断したのか3人とも退出していった。
「アランは今どこにいるの?」
「この城の一室で寝てるよ。私たちを違って人間の体だから1か月かけて進化させてる途中だから今は話すことはできないよ。」
「そうよね。目覚めたら教えてちょうだい。それまでは私も鍛錬に励むことにするわね。」
「ちょっと待って、改めてステータスも確認したいし、もう少し話したいからお茶でもしない?」




