263話 後始末
「すまないがまだ拘束を解くことはできない。今住人たちが城に押し寄せてきて、魔王がけしかけてきたんだからあれだけの軍勢を失った今こちらから仕掛けるべきだと暴動を起こしているのだ。手枷は外すが、ここでもう少しだけ待っていてくれないか?」
「どうするのですか?国民には魔王や魔族は全く信頼されていないのでしょう。現実は魔王がいることで経済などすべてがうまく回っているということも知らず。」
「そうだな。魔王領との交渉はどこの国でも国家機密として扱われる。どの国でも知っているのは上層部だけだ。」
「逆に何かしらの方法で私の戦力を国民に見せつけることであの程度の軍を派遣するはずがないと思わせるのはどうでしょう。実際に私の軍は最低レベルでも、どこの国の国家騎士よりは強いですし。」
「さらっととんでもないことを抜かしたな。国家騎士よりも強いとなると、天災級と呼ばれるAランク冒険者でも手に余るほどの案件じゃないか。それこそSランク冒険者くらいでないと。」
「でもこの国にSランク冒険者はいませんよね。私の軍はそれだけ強大なんです。あんなちっぽけなものと比べないでほしいほどです。実際にあの襲撃をした魔王の所在もわかっていますからそいつに自白させるという手もありますが・・・・・・」
「国民には魔王が言い逃れをするために用意した身代わりだと思われてしまう、か。」
「そうです。それに、私は用意しようと思えばあのレベルの軍勢の用意もできますので、そもそもどんな手段を用いても国民に納得させるのは無理でしょう。おそらく国民からの支持を集め調子に乗っている高ランク冒険者が討伐に動き出すとか言い出すと思いますよ。こちらからは敵対するつもりはありませんので、全員生きて送り返させますけど。国民への対応はどうしましょうか?」
「私の意見としてはあえて敵対しているふりをしながら裏で取引や他国との交渉は続けてもらいたいと考えている。そして数年してから和平協定を結んだと国民に大々的に宣言するのが最も効果的だと思っている。」
「確かにそれが一番ちょうどいい塩梅かもしれませんね。冒険者たちが向かってくることに関しては止めなくていいので。こちらで対処します。大々的に行き来ができないとなると、ハンゾウがいいでしょうか。彼は影さえあればどこにでも行くことができますので何かあった時もすぐに対応できます。そうですね。1か月に1度こちらに伺ってそれぞれの情報の交換や取引についてなどの話をお願いします。特に変更がなければその旨を伝えて代えさせていただいて構いません。実際の取引についてはこれまで通りに行って問題ないと思いますので。」
「あぁ、そうしてもらえると助かる。さてどうしようか。帰したいのはやまやまなのだが、国民に気づかれてしまってはいけない。」
「私がどうやってきたと思っているのですか?襲撃からあんな一瞬で対応したのですから、転移位は使えますよ。」
「魔力は大丈夫なのか?」
「?どういうことですか?」
「いや、近年開発された転移の魔法は魔力消費が激しいため、戦闘後に使えず、あまり意味がないと言われているんだ。」
「そうなんですか。私の転移は魔法ではなくスキルですし、私の魔力は尽きることがないので何も問題はありません。それではこれでお暇させていただきます。1週間後の昼食時を少し過ぎたころに先ほどお話ししたハンゾウという私の配下を使わします。今回の件の詳細についての確認をします。ハンゾウの到着後、私もうかがいますので。ただ、もしくはそちらの側近の方の影からハンゾウは出てきますので陛下以外誰もいない部屋で待機していてください。ハンゾウとの接触を確認次第私も同じ場所に転移します。」
「承知した。1週間後の昼食時の後だな。こちらも用意をしておこう。」
「くれぐれも内密に、ほかの方に話が一切漏れぬようにお願いいたします。それでは私はこれで失礼いたします。スキル{時空間転移}」
メルガロ王の返答も聞かずに転移した。少しやることが増えてきた。先ほどの会話中もハンゾウとカインからの連絡があった。2つ以上同時に聞くことはできないのでとりあえず玉座の間に待機させていたのでそこまで転移する。一気に2人からの連絡って正直嫌な予感しかしないなぁ。




