261話 クヌム王国②
それから1時間メリジューヌはありとあらゆる手段で攻撃してきた。魔法による攻撃だけでなく、多彩なスキルによる攻撃、武器による物理攻撃までこなせるみたい。それでも無限の耐久力を持つ私には傷一つ付けることができない。1時間もたつ頃にはメリジューヌは疲弊しきっていた。
「さて、1時間経ちました。まだ続けますか?まぁ、あなたを逃がすつもりはありませんけど。」
「降伏します。町を襲って申し訳ありませんでした。命だけはどうかお助けください。」
最期に結構強烈な魔法打ってきたし、それが切り札だったのかな?降伏してこちらに引き込めるならそれもいいかな。その世界にほかの魔王がいるなら牽制にもなるし。
「まぁ、いいけど。条件がある。これ以降あなたたちの世界の住人によるほかの世界への侵攻は禁止します。私は他の世界に渡ることもできるし、他の世界の様子を把握することもできるから。ごまかそうとしても無駄だからね。魔王ならそのくらいの牽制はして頂戴ね。」
「もちろんです。それでは失礼いたします。」
スキルで転移して帰ってしまった。怯えていたし、こちらの陣営に引き込むのは難しいかな?まぁ、抑止力になってくれるだけでも十分でしょ。さてと、王様に報告に行かないとね。メルギス王に会うのは久々だし、信用してもらえてるかな?
王城についた私はすぐに拘束されていた。魔族の軍勢が攻めてきた直後に王に会いたいなんて言うやつがいたらそりゃ拘束もするよね。まぁ、今、王に確認に行ってるらしいし、大丈夫だとは思うけど。冒険者カードも持っていかれちゃったし、あんまり秘密を覗かれるのは嫌だけど、王にならいいかな。衛兵程度の力では見ることができないように事前に魔法で細工をしてある。メルギス王は{神眼}というスキルを使えたはずだし、それなら看破できるはず。
それから少し時間が経ったが何も起こらない。ただ冒険者カードを持っていかれ、両手を拘束され、口に縄をかまされた状態で牢に入れられている。この牢は特定の札がないと通過できない結界が張ってあるようだけど、この程度なら転移でどうとでもできる。ただ、魔王リアへかかった冤罪は晴れていない上に脱獄となるとさすがにイメージが悪すぎる。脱獄の罪はかなり重い。下手に動かない方がいいかな。
これで国王が変わっていたらヤバいかもな。メルギス王だったらもっとスムーズに話が進む気がする。監視の衛兵に聞いてみるか?いや怪しまれそうだし、ハンゾウに聞いてみようか。
(ハンゾウ、今いい?)
(いかがなさいましたか?)
(今のクヌム王国の王って誰?)
(前王の御子息であられるメルガロ王でございます。メルギス前国王はご存命ですが、早いうちにご子息に国を継がせて今はご子息の指導とサポートをされているそうです。)
(ありがとう。聞きたいことはそれだけだから。)
メルギス前国王が生きてるってことはメルガロ王には{神眼}が引き継がれていないってこと?代々受け継がれるってことらしいけど、まさか生まれつき所持しているんじゃなくて前の王が死んだら、次代の王に宿るようになってるとは。それだと冒険者カードを見ても分かってない可能性がありそうだけど、メルギス王がいるなら問題ないかな。




