259話 レオナルド
レオナルドは察知していた。この世界を同じ波長をもつ世界が新たに誕生しているのを。これまで同じ波長の世界2つに戦いを仕掛け勝利した。配下たちが優秀であるのもそうだが、そのほとんどはレオナルド本人の功績である。彼の持つ特殊技能{波長探知}と{気体操作}の力でほぼ1人で世界を滅ぼした。
{波長探知}で探し当てた、同じ波長をもつ世界おうぁ以下に教え、配下の者に異界への扉を開かせる。その扉の先に{気体操作}の効果を適用し、空気中の酸素を0にする。それにより生物は生命活動が出来なくなり、建物なども一切が消滅する。それを2つの世界に対して同時に行った。
レオナルドは気が付いていたのだ。この世界は何者かの手によってつくられたもので、そのさらに上の存在がいることに。だから、持って生まれた力を最大限使用して覚醒魔王にまで至った。だが、これでも遠く及ばないことくらいは分かる。かの存在に対抗するには俺も世界を作れるくらいに強くならなければいけない。だが、何度試してみても世界を創り出すことなど不可能だった。そんな神業に等しいことを当たり前のようにやってのけたものは神と呼ぶのにふさわしい存在だろう。現に今、同波長以外の世界に干渉できない結界の展開と、新たな世界が生み出された。当然それを察知したレオナルドだったが、何か行動を起こすでもなくただ思っていたことを口に出した。
「この世界に恨みがあるわけでもこの世界を作ったものに恨みがあるわけでもないが、純粋に掌の上で転がされていると思うと、反吐が出る。今も同じ波長の世界以外と断絶する結界を張ったな。しかも新たな世界のおまけつきだ。おい、この世界を創り出したクソ野郎!今も見ているんだろう?絶対に後悔させてやるからな。この俺を意のままにできると思わないことだな。」
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まさかこんなにも早く気が付けるなんて。自分の思考時間を無効に合わせてたから正確だとは思うけど、まさか察知するスキルでも持ってるのかな?わざわざスキルを除くのもあれだし、かなりの実力者みたいだし、このまま恨まれてるままにするのは良くないかも。声だけで語り掛ける?それだと更に胡散臭くなりそうだし。ここは一回会いに行ってみてもいいかも。
「スキル{時空間転移}」
私は【白虎世界】に開かれた【リアの世界】とつながるゲートの前まで転移した。何もなくなり、荒野だけが広がっていた荒野は無視してゲートの方へ進む。鎧の音がする。多分私の気配を察知して警戒態勢を取っているのだろう。
「良い。そのまま迎え入れてやれ。」
そう聞こえたと思うと、もう一度鎧の音がした。警戒態勢を解除したのだろう。レオナルドもこちらの強さはある程度把握できてるってところかな?
「こんにちはレオナルドさん。ご機嫌はいかがですか?」
「これは、どちら様ですかね?わざわざ酸素のないあの空間を経てまで尋ねてきてくださるとは。私に何か?」
「いえ、少しあなたという存在が気になったのと、あなたの発言に訂正をしに来たのです。」
「ということは貴様がこの世界を創り出したとでもいうつもりか?」
「えぇ。証拠を出せと言われましても難しいですが、あなたでは私にかなわないので攻撃するのはやめてくださいね。」
「あぁ、肌で感じているさ。今の俺では到底かなう相手ではない。」
「そうですね。それでは本題に入らせてもらいます。あなたは私の掌の上で転がされていると思っているようですがそれは違います。私が本当にもてあそぶこと目的なら、あなたほどの強さの者生まれないよう調整をします。私がこの世界に干渉したのはたった3つ。1つ目は魔力と空気で満たすこと。2つ目は地形。3つ目は私のいる世界との時間の進み方の差異です。」
「では、俺が覚醒魔王になったのも本意でないと?」
「本意でないことはないです。私は強い存在が生まれて交流ができることを望んでいたので。ただ、魔王種トリアを超える存在が突然出てきたことには驚きましたね。トリアは確かに強かったですが私からすれば大したことはありませんでした。」
「そうか。なぜか貴様の話は素直に信じることができるな。邪悪な気配も感じないし、裏もないように聞こえる。でも一つ引っかかることがある。なぜ世界を作るなどといった回りくどい真似をした?」
「そうですね。説明すると長くなるのですが、一言でいうなら私の願いをかなえるためです。そのために世界を作り、【創造神】となる必要があったのです。」
「願いというのは先ほどの事か?」
「いいえ。私は私のいる世界の【創造神】を殺したいと願っています。そのための力を得る必要があり、その段階として【創造神】になりました。いまでも【創造神】は倒せていませんが、もう少しで私の野望はかないます。そうしたら、この世界の事ももっと知りたいですね。」
「そうか。そちらの【創造神】は邪悪なものなのだな。」
「そうですが、あなたは私を邪悪だとは思わないのですか?」
「あぁ。あんたからは世界のための正義感と、まっすぐな心が感じられる。そんな奴が邪悪だったら俺は今後他人を信じられなくなるな。」
「そうですか。それでは{無限無法者}」
この世界の管理画面を開き、現在地からレオナルドを選択する。種族管理画面にて上位種族に支配者と管理者を追加。レオナルドを支配者、その他の魔王たちを管理者の名の付く種族に進化させ、新たなスキルと力を与えた。この進化は眠りを介さない特殊な進化だ。
「どう?進化して新しいスキルを使えるようになってるんじゃない?」
「なぜわかったんですか?しかもこんな変なタイミングでの進化?」
「それはささやかながらですが私からの贈り物です。あなたはこの世界で唯一の支配者の称号を関する存在です。新たなスキル役立ててくださいね」
レオナルドの新たに得たスキル。それは{リアの恩寵}。【創造神】リアの魔力と力を借りることができる常時発動技能。
「はい。ありがとうございます。リア様。」
レオナルドが急に跪いてきた。まぁ悪い気はしないかな。
「あと、あなたには私への魔法通話権限をあげるから、何か起こったら連絡を頂戴。それじゃあ私は帰るから。スキル{時空間転移}」
{リアの恩寵}に含まれているもう一つの権能である魔法通話について権限を与えて、私はレオナルドの前から姿を消した。
その後、レオナルドが異常なほどに私を崇拝していたことと、最終的にいい友人になれたというのはまた先のお話。




