240話 作戦開始!
ハンゾウのスキル確認も終わり、これでやっておかなければならないことは四天王のステータス確認くらいだ。面倒だし、すれ違ったり、会ったりしたときにこそっと鑑定すればいいか。
とにかく獣魔人をおびき出すための作戦の基盤は整った。後は明日住人を避難させて、ニケ村に結界を張って、強力なモンスターを召喚すれば完了だ。狸の獣魔人が出てきてくれるかは確実ではないけれど、そればっかりはどうしようもない。とりあえず人間ではかなわないレベルのモンスターを召喚する予定だけれど、人間の最大値がどのくらいかわからないし、確実とは言えないんだよね。あんまり強すぎるモンスターだと自我があるから、殺されに行かせるのもかわいそうだし。
自我の無い魔物で最も強いものを召喚し、そいつをニケ村付近で暴れさせる。このことを知る魔王勢力以外は何か陰謀があるだろうと探るだろう。しかし、万が一バレたとしても問題はないだろう。わざわざ世界最強の魔王に挑む馬鹿な国なんてこの世界に存在するはずがない。
とりあえず召喚するのは精霊番犬だ。精霊が狼族の力を取り込んだことにより自我を失い、莫大な魔力と高い身体能力と戦闘センスを持った犬型の魔獣だ。子の魔獣は知能がない分かなり強く、今のリーンと互角に戦えるレベルではないだろうか。こいつは私の命令しか聞かないようにしてある。逆のことを言えば私の命令は必ず遂行するので結界を破れずとも攻撃し続けてくれるだろう。
準備を終え、翌日、私は朝からニケ村に来ていた。村人たちは全員実家の前の広場に集まっていた。子供たちを中心に怯えるような表情を見せる者もいたので、少し気になってお父さんに尋ねる。
「ねぇ、どうやって村人全員を集めたの?とても本当のことは話してないように見えるんだけど。」
「小声で尋ねてきた私に対して父も小声で返してくる。
「そんなことを馬鹿正直に言って受け入れえられると思うか?おれは未曽有の天災が近づいているとお前に言われたからそれをお前が排除するまで避難するといっただけだよ。」
「なるほど。確かにそれならみんなついてきてくれそうだね。」
私のその言葉に視線で返事をしたアランは大声で村人全員に語り始める。
「それでは皆、リアの近くに集まってくれ。リアのスキルで全員同時に転移させてもらうからできるだけ密集して動かないように。」
アランのその一言で村人たちが全員私の周りに集まった。これで全員を転送できるだろう。
「それでは行きますよ。スキル{時空間転移}{集団転移}」
初の大規模での集団転移ではあったが何も問題はなく転移できた。その後アランにそこについての詳細を伝え、ハンゾウの分身体についても伝えた。後は村長らしくまとめ上げてくれると信じよう。
私は私のやらなければならないことを実行に移す。まずは再びニケ村に転移し、結界を張る。この結界は絶対的なものなので何があっても破られることはないだろう。結界を張る際に侵入可能な対象としたのはリーンとカイン、アンチデューン、ディアの4人だ。基本的に何があっても私を含んだこの5人以外が来ることはないだろうし、これで十分だろう。
それじゃあ次は精霊番犬の召喚だ。精霊召喚でも魔獣召喚でもない特殊な召喚魔法の術式を構築しなければならないのだが、スキル{魔神}を使って3分ほどで終わらせてしまった。
「召喚魔法【精霊番犬】」
私の目の前には私の願いに応じて召喚された一匹の番犬の姿があった。




