24話 8層と9層
8層に足を踏み入れた瞬間、10体のゴブリンの群れが襲い掛かってきた。この階層からは普通のモンスターでもかなり強いようだ。
「ゴブリン10体はヤバくないか。リア、お前が強いのは……」
「マリオネットネイチャー」
リアの放った魔法は一撃でゴブリンたちを絞め殺した。カインが何か言おうとしていたらしいが、リアにとってゴブリンは何体いようと敵ではないのだ。
「行きますよ。」
リアがそう言うと、これまでとは打って変わり、ゆっくりとソリを引き始めた。その後もゴブリンの群れが襲い掛かってきたが、リアが返り討ちにし、エリアボスのもとへたどり着いた。そこにいたのは100体を超えるゴブリンの群れと、1体のゴブリンキングだった。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
『獅子の牙』の4人が悲鳴を上げる。彼らもこの数のゴブリンを相手にすることはできないらしい。
「少し静かにしてください。すぐに済ませますから。」
リアがそんなことを言っている。そして、このダンジョンに入って初めて詠唱を始めた。
(私も使えたことないけど、詠唱は覚えた。このダンジョンに入ってからレベルもかなり上がってるし、詠唱をすれば使えるはず!)
そんなことを考えながら詠唱をしているリア。そして詠唱を終える。
「ブラックホール」
この魔法は、暗黒魔法の最上位魔法だ。その力が暴威をふるう。
リアの目の前に現れた小さな黒い球状の空間。それをリアは自在に操り、RSTに左右されるが触れたものをその中の空間に取り込み、取り込まれたものはその中に入ると同時に絶命する。そんな絶大な威力の魔法はまずゴブリンキングを絶命させた後、残りのゴブリンたちも一掃し、ブラックホールを消し去った。その時間詠唱を含めて約3分。もはや人間にできることではない。
初の8層攻略なので、ゴブリンキングがいたところに宝箱が落ちていた。開けてみると中にはかなりの金額のお金が入っていた。その額金貨50枚。1年は遊んで暮らせる額である。リアはそれをカインたちに伝えようとしたが、『獅子の牙』の皆さんは、ゴブリンの数に圧倒されて気絶してしまっているのでこのままソリで連れていくことにした。
9層は悪魔族がはびこる階層だった。一概に悪魔といっても、下位のあくまであるレッサーデーモンやサキュバス、中位の悪魔であるデーモン、上位種のグレーターデーモンまでいた。リアは神聖魔法が使えるので悪魔たちを何事もないように屠っていった。エリアボスのいる部屋の前でリアは悩んでいた。さっきのようにこの人たちを放置するわけにもいかない。今は気絶していて戦うことなんてできないのだから。そう考え、リアは今作り出した結界魔法と神聖魔法の合わせ技「ホーリーフィールド」を発動させ、部屋の外に放置して、エリアボスと対峙した。
そしてエリアボス、アークデーモンとの戦闘が始まった。
リアはまたもや詠唱をし始めた。今度は暗黒ではなく神聖魔法の中でも最上位に位置する魔法を行使しようとしているのだ。そんなリアにアークデーモンが魔法を打ち込んでくる。
「インフェルノ」
「トルネード」
「コールサンダー」
「ダークエクスプロード」
各属性の上位魔法を使っているが、RSTはレベル1の時点で870もあったのだ。そんな魔法でダメージを与えられるはずもない。そんなことをしているうちにリアの詠唱が終わった。
「ホーリーレイン」
これは光の雨を降らせる魔法。雨を降らせるため、敵も味方も回避は不可能、しかし、この魔法は魔の存在にしか効果を表さない。逆に魔の存在には絶大な効果を示す。それは、強制的な浄化だ。いかに高位の存在であろうとこの魔法の前には無力、RST以外で防ぐ手段が何一つとしてない。そんな神聖魔法最上位の魔法なのだ。
リアが使う最上位の神聖魔法なのだ。アークデーモンは耐えられるわけもなく消滅した。そして、宝箱が現れた。
しかし、この部屋にまだモンスターの反応がある。場所は宝箱だ。
つまりこれはミミック。さすがは悪魔、死んでもなおタダではやられないという強い意志を感じる。しかしリア相手にはそんなもの通用するわけもなくリアは、『獅子の牙』の人たちのところに戻ったのだった。