234話 領主との戦闘
転移した先は死神がリーン一行を襲ったダンジョン。ここなら未開拓なので他の冒険者が来ていることなどもないだろう。
「お互いの要求を確認します、私が勝てばキルスから10人ほど、魔王領に連れて行かせてもらいます。私の勝利条件はあなたを戦闘不能にすること。そしてあなたの勝利条件は私を殺すこと。私を戦闘不能にするには殺すしかないので勝利の条件に違いがありますが、同義だと思ってください。そしてあなたが勝利した場合、魔王側はすべての要求をのみましょう。すでに私の最も信頼のおける配下に連絡をしてありますので。」
「わかった。それでいい。たかが魔王ごときが元Sランク冒険者である俺様に勝てると思うなよ。」
そう言いながら拳を構える。武器を携帯していないのかそれとももともとこの戦闘スタイルなのか分からないが、出し惜しみされてもあいつがあとから言い訳をするだけだろう。
「あなたの得意な武器は何ですか?特別に貸して差し上げます。もし私を殺せたらそれも持って行ってもらって構いません。」
「そんなもんは必要ねぇよ。俺は必要なものは常に持ち歩く人間なのでな。」
つまり、武器は必要ない。もしくはどこかに隠し持っている。といったところだろう。それなら攻撃してきたところをカウンターで一撃だろう。
「そうですか。それではどうぞかかってきてください。」
とりあえず相手の力量もみたいし、何もせずに様子をうかがってみよう。向こうも警戒しているのかなかなか動こうとしないが、こちらは座り込んで一切動かない構えを取る。それに対してなめられていると感じたのかまっすぐに突っ込んできた。
「【ファイヤーボール】」
と思ったらまさかの魔法だ。低級のものではあるが、かなりの魔力が込められている。おそらくかなり魔法について詳しいだろう。体格からして体術も得意そうだ。なるほど。これはなかなか厄介そうな相手だ。まぁ、私は攻撃する気はない。攻撃をしなくても傷をつけられない相手に攻撃をし続けるのにはかなりの精神力を持つか、相当なバカでないとできない。それに攻撃を続けるだけでも相手のスタミナは削られていく。それだけで私は勝てるのだから。
魔法をよけようとしない私に魔法を目くらましとしても利用し、肉弾戦を仕掛ける構えにはいっている。さすがは元Sランク冒険者。戦闘経験は豊富なようだ。
魔法は直撃し、物理攻撃も通常なら一撃で気絶するであろう場所に入った。しかし、私にはその程度ではダメージを与えられない。それからしばらく同じような方法で攻撃し続けていたが、私にダメージを与えられないまま10分が経過し、領主が話しかけてきた。
「貴様は何者なのだ?なぜ俺の攻撃で全く傷を負っていない?」




