233話 傲慢な領主兼ギルドマスター
「ギルドマスターからの伝言です。俺より弱い奴のために時間を割くわけがないだろう。何か実績を示せるものを持ってくれば面会してやらんでもない。だそうです。」
とんでもなく自己中心的な発言だな。まぁ、私の方が強いのは確実だからいいけど。
「わかりました。それではギルドマスターの部屋まで案内してください。実績を示せるものはありませんが、ギルドマスターより強いと証明できるものはありますので。」
「はぁ。そうですか。気を付けてくださいね。あの方の不興を買うと死刑にされかねませんから。」
「心配してくださってありがとうございます。皆さんも大変そうですね。それも改善できるかもしれないのでできるだけ頑張りますね」
「本当ですか!ぜひよろしくお願いします。」
それから場所の変わったギルドマスター室にの前に案内された。
「領主様、先ほどお話した方々が実力を示せるものをお持ちということでご案内しました。入室許可を頂けますでしょうか。」
受付嬢がそういうと中から横暴な声が聞こえてきた。
「お前だけ入れ。その実力を示せる証拠とやらを先に見せてもらおうか。」
受付嬢が涙目になりながらこちらを見てくる。この感じなら自分が勝てないと悟ればすぐに大人しくなりそうだな。私は受付嬢に小声でささやく。
「今から少しだけ重圧がかかると思いますが、どうにか耐えてください。」
受付嬢は何が何だかわからないような顔をしていたがそれは放っておいてあれをやるしかないだろう。今の私の姿は{ドレインタッチ}の効果で人間に擬態したものだ。つまりこれを解除してしまえば、本来の姿で、本来はなっているオーラを放つことになる。服装は私の意思に反応して自由に変わるので、この世界に戻ってきたときの姿へと変わることにしよう。そう。魔王としての私の姿だ。
「スキル{ドレインタッチ}解除。」
そう唱えると頭には角が生え、背中には巨大な漆黒の翼。そして漆黒のドレス。これ以上ないほどに魔王としての威厳を発揮した姿へと変わる。
それに対して何か反応があるかと思ったが、部屋の中からは何も反応がない。
「領主様、受付嬢の方が気絶してしまったので私たちの実力を証明する証拠をお見せするために入室してもよろしいでしょうか?」
おそらくこの扉にはあらゆる魔法や気配を遮断する魔法がかかっている。中にある情報を抜かれないようにするためなのだろうが、中からも見ることができないのは致命的だろう。
「仕方がない。1人だけ入室を許可する。」
リーン、ルイと目を合わせたのち、私が入室する。
「失礼いたします。」
入室した私に対して何か言おうとしていた領主だったが、入室した瞬間に硬直してしまった。気絶はしていない。ただただ驚きすぎて反応が遅れているだけなのだ。
「やっぱりこの姿だと屋内で羽が邪魔ですね。すみませんすぐに収納いたします。スキル{ドレインタッチ}」
そう言って改めて擬態する。もちろん元の人間の姿にだ。しばらくして領主がようやく口を開いた。
「魔族が一体この私に何の用だ?」
少し声が震えているが、さすが領主だけあってしっかりしている。
「私が魔族ですって。そこらの雑魚と一緒にしないでくださいよ。私は魔王リアです。要求はこの町の住人を10名ほど魔王領に連れ帰りたいというものです。」
「そんなことを許すとでも?誘拐として全世界で協力して魔王城を落としに行くことになりますが。」
「一つ聞きましょう。なぜあなたは襲われた調査隊の訃報を真っ先に知ることができたのですか?あなたが殺すよう召喚した【死神】に指示したんですよね。これを告発されたくなければさっさと了承してください。何も人体実験などに使うわけではないので。」
「そこまでわかっているのなら、私の強さもわかるだろう。いい加減引いたらどうだね。」
「何もわかってないみたいなので教えてあげましょう。【死神】による被害者は0人です。すべて私が守り、救いました。これを聞いてなお私と戦うというのなら止めません。ここではあれなので場所を移しましょうか。」
そう言いながら転移の魔法を発動させる。そして領主を分からせるための戦闘が始まった。




