22話 『獅子の牙』
「きみが格付け試験を受けるというリアさんかい?」
リーダーらしき人物が話しかけてきた。
「はい。よろしくお願いします。」
「マジかよ?まだまだ子供じゃねーか。お前みたいなのがやっていけるほど冒険者は甘くねーよ。」
リーダーの隣にいた盗賊風の格好をした冒険者が絡んできた。
「止めろ、ジン。すまないな。こいつはこういうところがあるんだ許してやってくれ。」
そういってリーダーの男が頭を下げてきた。
「では改めて、俺たちはAランク冒険者パーティ『獅子の牙』。俺はリーダーのカイン。見てのとおり戦士だ。そしてこいつが盗賊のジン。こっちが神官のティアにウィザードのロインだ。」
「よろしくー。」
ティアが棒読みでそんな挨拶をしてきた。
「よろしくなお嬢ちゃん。」
ロインは優しく声をかけてきた。
ジンは何も言わないままだ。
「私はリア、11歳です。ギルドへの紹介は、両親であるアランとリリスにしてもらいました。よろしくお願いします。」
「あのお二方の娘さんだったのか。それで格付け試験を受けるというわけだね?」
カインが納得したように言った。
「ケッ、コネかよ。まぁどうせよくてDランクってところだろうよ。」
「もう黙っててくれジン。話が進まない。」
「わかったよ。」
悪態をつきながらもようやくジンが黙った。
「一応確認なんだけど、パーティメンバーはいないんだね。あのダンジョンは僕たちも少し前に挑戦したんだが、かなり強いモンスターもいたが、それでも挑むのかい?僕たちはギルドの規則にのっとって君が戦闘不能になるまで手出しはできないよ。」
「はいもちろん挑みます。」
「わかった。」
「すぐにやられて俺たちが助ける前に死んじまわないようにせいぜいがんばれよ。」
ジンがそんなことを言い放った。ここまで言われるとリアも腹が立ってきたので少し言い返すことにした。
「お言葉ですが、私はあなたよりも強いですよ。」
「はぁ!?お前みたいなガキに俺が負けるわけがねぇだろうが。」
「私は{鑑定}スキルを持っています。私の鑑定であなたのステータスをすべて見ることができています。{鑑定}スキルでは格上の相手のステータスはほとんど見られません。つまりあなたは私よりも弱いということです。」
そう。リアはこの場にいる全員の強さを{鑑定}スキルで把握していたのだ。その結果リアが出した結論は、全員でかかってこない限り絶対に勝てる、というものだった。このようにバランスのいいパーティだと全員同時に相手にすると予想外なことが起こる可能性もある。それを考慮したうえでの結論である。
「{鑑定}スキルはズルいだろうよ。まぁここで戦ってもギルマスに怒られるだけだろうからやめとくわ。」
意外にもあっさりジンは引き下がった。こういう世渡りも生きていく上ではとても大切なのだ。
「それでは格付け試験が行われるディアダンジョンへ向かうぞ!」
カインがそう号令をかけ、5人はディアダンジョンへ向けて出発した。




