209話 帰宅
私が慌てて転移してきた場所は家の前だ。あまりにも慌てていたので人目を気にしている余裕などなかった。昔遊びに行っていつもより1時間ほど遅く帰ったことがあった。その時にリリスにものすごい剣幕で起こられたことがあるのだ。あれ以降トラウマになって刻限を過ぎて帰ることはなかった。
恐る恐る扉を開ける。
「おかえりなさい、リア。昨日は帰ってこなかったけどどうしたの?」
リリスが心配そうに出迎えてくれた。怒られなさそうでよかった。
「連絡忘れててごめん。ちょっと、ダンジョンで20人くらいの集団が全滅しかけて助けてたんだ。また明後日帰ってきて説明するからその時でいい?それまではちょっといろいろしなきゃならないことがあるから魔王城に泊まるね。お父さんにもよろしく。」
「分かったわ。明後日は何時ごろに戻ってくる?ご飯はどうすればいいかしら?」
「夕飯の時に食べながら話そうかな。あと一人連れてくると思うからその人の分も作ってもらっていい?」
「分かったわ。それじゃ、いってらっしゃい。」
「行ってきます。」
怒られなかったことに安堵しながら{時空間転移}を発動させ魔王城の玉座の間に戻る。
「おかえりなさい。いったいどこに行ってたんですか?」
急に現れたにもかかわらずダリスが驚きもせず質問してきた。アンチデューンが事前に急に出てくると伝えていたんだろう。
「ちょっと家に帰ってました。何も伝えてなかったので。」
「そうですか。そういえば、俺たちをここに呼んだのって何か理由があるんですか?」
「蘇生の成功とリーンさんたちについて伝えるのが一つ、あとは今後どうするかを聞きたいと思ってね。」
「今後とは?」
「キルスに戻って冒険者を続けるのか、何か他の稼業でも始めるのか。どちらにせよ、ここまでかかわったからサポートはしようと思ってる。金銭的なこともそうだし、冒険者として生きていくなら私からあなたたちに力を授けることもできる。ただ、それをすると不死身になってしまうのよね。リーンさんたちにはすでに同じことをやっているわ。それしか治療の可能性がなかったから。」
「なるほど。」
「あとは、ここに住むっていうのもいいわよ。働かなくて客人扱いで住んでもらってもいいし、何か仕事を教えてもらってしてくれてもいいし、ここなら好きなように住んでもらって構わないよ。今後の方針に関してはこんなところかな。どれを選んでもらってもいいよ。もちろん全員に聞くけど。まぁ、皆さんが回復されるまでゆっくりしてもらっていいですよ。」
「ありがとう。そうさせてもらうよ。」
「さてと、固い話はこれくらいにして何かお話ししましょう。何か聞きたいこととかないですか?」
私がそういうと、皆がこぞって10年前の私と今の私その間の私について知りたがったのでいろいろと話してあげた。久々にこうやって私について話してなんだか気が楽になったかも。
【創造神】を倒すことだけが目的だったけれど、あまり重く考えすぎない方がいいのかもな。




