204話 救える?
時間を動かすのと同時に困惑の声が上がる。まだ戦っていた戦士たちが周囲を見回している。さっきまでダンジョンの中にいたはずなのに明らかに建物の中にいるのだ。そして見覚えのない人が立っているのだから訳が分からないだろう。
「貴様は誰だ?」
困惑しながらも剣を構えて1人が訪ねてきた。
「安心してください。私はあなた方の味方です。リーンさんが危険な状態だと察して助けに入ったのです。一度時間を止めたのであなたたちからしたら何が起こったのかわからないかもしれませんが、おそらく死んでいない方々は目覚めますよ。しかし、少し酷な運命を背負わせてしまうかもしれませんが。」
「何をしたんだ!それ次第では俺たちは敵になるぞ!」
「安心してください。体に害を与えることはしていません。うまくいかなかったら皆さんなくなってしまいますが、私が見たところ皆さん回復魔法で助けることは出来ませんでした。なのでこれに賭けるしかなかったのです。」
「そうか。詳しい話を聞かせてもらえるか?」
「はい。」
それから私は何が起こっていたのか。彼らにどんな処置を施したのか。などすべてを包み隠さず話した。もちろん私が魔王であることも。
私の見立てではその話を終えたころに進化の眠りが終わり目覚めると思っていたのだが、誰一人として目覚めなかった。鑑定した感じではみんな生きているので安心していいだろう。
「皆さん目覚めませんね。私の見立てではそろそろ目覚めると思うのですが。とりあえずよりも遅くなってきているので今日はここに泊まってください。空室を準備させるので少し待ってください。眠っている皆さんもベッドに移動させますね。亡くなった方々は蘇生できないか試してみます。できるだけ蘇生できるよう努力しますが、いかんせん損傷が激しいので厳しいかもしれません。最悪アンデッドや悪魔にすることは出来ますけど。とりあえず人間としてよみがえらせることができるよう頑張ってみます。」
「あぁ、ありがとう。一つ聞いてもいいか?」
「はい。少し待ってください。」
戦士を待たせて先にアンチデューンに部屋の用意をするように指示を出す。
「お待たせしました。それで何でしょうか?」
「あぁ。なぜあんたは魔王なのに俺たちにこんなにも協力的なんだ?さっきリーンの名前を出していたが知り合いかなんかなのか?」
「はい。私はもともとキルスの冒険者ギルドに所属するSランク冒険者でした。」
「Sランクってもしかしてあんたがあの伝説の冒険者リアか!」
「おそらくは。それでリーンさんには恩もありますし、魔王になってからも親交があったので魔法で連絡できるようにしていたんです。それで助けてと言われて急いでそちらに向かったのです。ずっとこの世界を離れててあってもなかったし、それも伝えずにこの世界を離れてしまったのでせめてもの贖罪として助けたかったんです。」
「そうですか。ありがとうございます。あともう一つ、魔王っていうのは本当ですか?疑っているわけではないのですが、見た目も人間だし、普通の冒険者って言われても疑わないですよ。」
「本当ですよ。この姿はあくまでも擬態したものなので。ほら。」
そういいながら角や翼が生えた本来の姿に変身した。呆気に取られていたのと、怯えられたので人の姿に戻り、
「すみません。どこに行くにしても不便なのでこちらが本当の姿と思っていただいていいですよ。部屋の準備もできたみたいなのでこれ以上何もなければそちらでお休みになってください。私は蘇生できないかチャレンジしてみるので。」
玉座の間の扉の前にアンチデューンが控えていたので案内をさせた。アンチデューンには何か聞かれたら答えるよう指示をしておいた。進化した人が目覚めたら知らせるようにとも伝えた。




