198話 魂
「リア、戻ったぞ。」
予想よりも早く戻ってきたカインの声が聞こえてきた。
「入っていいよー」
声をかけるとすぐにカインが入ってきて、準備してあった椅子に腰かけた。アンチデューンが準備していたお茶をすすりながら、
「それでこの現象は何なんだ?」
「一つずつ説明していくね。まず周囲の動きが止まったのは私が魔法で時間を停止させたから。あなたたちが動けるとは思ってなかったんだけど、魔法の実験にあまりにも時間がかかりそうだったから、時間を止めてじっくりやろうと思って止めたの。」
「時間を止める魔法とはまた大きな魔法を使えるものだな。それで俺たちはどうすればいいんだ?」
「基本的には好きに過ごしてもらって構わない。この空間内では飲食、睡眠をとらなくても生きていけるから、迷宮に潜ってレベルを上げてもらってもいいし、世界中を旅してもらってもいい。魔法を解除する前に連絡するからあとは好きに過ごしてもらっていいよ。」
「分かった。」
それからカインはすぐに玉座の間から出ていった。何かしたいことでもあったのだろうか?それを気にせず私は魔法の実験に集中する。厳密に言えばスキルの実験だが、2人には魔法の実験といった方が分かりやすいだろう。
さて先ほどの続きだ。
鑑定の魔法で魂を鑑定することは出来ない。つまり魂とは生物が認識できるものではないということである。魂が認識できないとなれば魂が何なのかを知ることは出来ない。果たしてスキルを獲得するためのエネルギーがこもったものなのか、生命力ともいえるエネルギーをスキルに変換するものなのか、はたまたその他の何か得体のしれないものなのか。
いずれにしても今の私の理解できる範囲ではない。しかし、これを理解しなければスキルを創り出したり、意図的に獲得したりすることは出来ない。
試しに近くにいた犬型魔獣の魂を鑑定しようとするが、やはりそれらしきものは見つからない。まず魂というものが特定の位置にあるのか、体内をめぐっているもしくは個体によって位置が異なるものなのか。それさえも分かっていないのだ。魂が抜ければ死んでしまう。死んでから80時間が経過することで魂は肉体を離れ、蘇生ができなくなってしまう。
肉体を流れる魔力は鑑定することができるので魔力で構成されているわけではないだろう。逆に魔素ならば鑑定で認識できないので魔力になっていない魔素の集合体という可能性はあるだろう。
それとも全く別のもので構成されている。もしくは何かで構成されているのではなく、魂その物が、1つの物であり、それは何によって構成されているわけでもないという可能性もある。これで大きく3つの可能性が思い浮かんだ。
おそらくこのいずれかだとは思う。どれでもないとなると魂というもの自体が実態を持っていないことになる。実態を持っていなければこの世界では体内であろうと存在することは出来ない。
つまり、これまで考えた3つのどれかがあたりだろう。魂その物の正体はこれでおおよその見当がつくが、そこからスキルが生まれている、もしくは得たスキルが魂に結びついている。そのメカニズムが不明だ。外部からスキルを獲得して魂と結びつくというのは考えづらい。そうなると例外が生まれるはずだからだ。
魂からスキルが生まれるならば、魂とスキルに深い結びつきがあるのも納得できる。では、どうやって魂からスキルが生まれているのか。今度はそれを考えていこう。




