195話 魔力の変換
翌日、私は再び魔王城を訪れていた。朝食を終え、魔王城の玉座の間に転移するとそこにはアンチデューンが控えており、外が少し騒がしかった。
「リア様、魔王城の外に魔獣を生け捕りにしてありますがいかがすればよいでしょう。」
「ありがとう。とりあえず10匹くらいここに連れてきてもらってもいい?」
「承知しました。」
アンチデューンはそういうと魔法で配下たちに連絡をし、すぐに10体の魔獣を連れてきた。まずは少量でも魔力を変換して流し込む魔法の開発だ。相手の魔力を鑑定してそれに合うように自分の魔力を変換した状態で流し込む。もちろん自分の体に他人の魔力と同じものがある状態になるので何かしら自分にも耐性を付けなければならない。
幸いスキル{魔神}の効果で魔力に対する耐性はあるらしい。それがなければとっくに{ドレインタッチ}で吸い取った魔力で死んでいるだろう。魔力への耐性は大丈夫だとして魔力の変換の方は大変そうだ。魔力というのは空気中に漂っているものと生物の体内に在るものの大きく2つに分けられる。
前者は認識することさえできない。しかし、魔法を発動させる時などは、自身の魔力だけでなく空気中の魔力も気づかないうちに使用している。
後者は認識することができ、一般的に魔力と言ったらこちらの事を指す。しかし、こちらは、個体によって少しずつ構造が異なり、自身の魔力の構造と少しでも異なる構造の魔力を体内に取り込むと、衰弱し量によっては死に至る。なので、その人に合った形に変換しなければならないのだが、これは相手の魔力を吸収し、鑑定、それからそれと全く同じものを自分の魔力から作らなければいけない。いいかえれば、その辺にいる生物の細胞を変質させたり組み替えたりして別の生物に作り替えるようなものだ。
とてつもなく労力がかかり、難易度が高く、高度な鑑定技術が求められる。コピー機のように素材を入れれば簡単に同じものを作れればいいのだが、そんな簡単なことではないので地道にやるしかない。
まず、近くにいた犬型の魔物の魔力を{ドレインタッチ}で吸収し、それを魔法で鑑定する。しかし、魔力の構造は大まかにしかわからなかった。通常なら大まかにわかるだけでもすごいことなのだが、今回はそれではいけない。完璧な鑑定が必要なのだ。仕方がないので最も高度に鑑定ができるであろうスライムの姿に変わる。そして再び鑑定をかけた。
その結果は予想通り、細かい構造まで知ることができた。しかし、私の魔力とはあまりにも構造に違いがありすぎて変換する作業が大変そうだ。とりあえず、この形をベースにして、一度私自身の魔力を最小単位まで解体する。本来、呼称が変わるわけではないが、今は分かりやすいように魔素とでも呼んでおこう。
そして魔力をかたどるための型のように魔獣の魔力の形をイメージする。そこに魔素を張り付けるような形で魔力を少しずつ作り上げていく。そしてプラモデルを作る感覚で魔力が出来上がった。一度完成したものは複製も簡単なので複製し、かなりの量の魔獣な魔力ができたはずだ。これを流し込んでみて魔獣が衰弱死しなければ成功だ。さっそく流し込んでみることにしよう。




