192話 朝食のために
『朱雀の洞窟』そこには人間が近寄ることはない。近寄るとしたら知能のないモンスターくらいだ。なぜならそこには世界最強の朱雀がいるのだから。
その前に今私は立っている。朱雀を倒して朝食までに家に帰らねば。
私はその洞窟の中に足を踏み入れた。中は気温が低く、朱雀の呼吸音らしき不気味な音が鳴り響いていた。もちろん朱雀の住まいなだけあって天井はとても高い。そして天井しかも背後から朱雀が襲いかかってくる。
私はそちらを向くことなく、朱雀の攻撃を受けた。しかし、傷ひとつつけることはできず、逆に足を掴まれる朱雀。そのまま
「スキル{ドレインタッチ}」
今回スキルの効果で喰らわれたのは魂。肉体は急に脱力し地面に落ちる。その肉体に{ドレインタッチ}を何回か発動させ肉体を喰らい消滅させる。スキルを獲得したようだが後回しだ。万が一白虎との戦いに時間がかかった場合、朝食の時間に間に合わないかもしれない。
「スキル{時空間転移}」
次は【白虎世界】の『白虎の洞窟』前へと転移した。迷うことなく洞窟内に飛び込むと、そこには大量の虎型魔獣がいた。一気に攻撃されると応戦するだけで一杯一杯になってしまう。先手必勝!
「創造魔法【爆焔】」
正面に向けて今作り出した高火力の火魔法を発動させる。この魔法は、効果範囲が通常よりも広く設定されている。これなら魔獣たちを一気に焼き払えるはずだ。
しかも火の広がり方が早いので躱されることもない。
少しして火が消えて目の前にいたのは白虎だけだった。白虎は目に見えぬ火どの速さで接近してきて丸太ほどある腕に鎌より大きな爪を振り下ろしてきた。ダメージはないだろうと思っていたのだがそれを受けると同時に私に肩から血が噴き出た。HPは無限にあるので死にはしないが痛い。頭に来たので速攻で殺すことにした。
「スキル{ドレインタッチ}」
腹部に触れながら魔法を発動させる。今回は肉体を一発で喰らった。全てが消え去り白虎を倒したことによってスキルは獲得したようだったが、白虎からスキルを奪うことはできなかった。スキルを所持していなかったのだろうか?っと、そんなことはどうでもいい。早く戻らないと。
「スキル{時空間転移}」
朝食のためニケ村にすぐに戻った。丘の上に転移してまずは創造魔法で装備の修復と怪我の治療、血液の除去をした。それから走って家まで帰った。さっき家を出てからこの世界の時間で8分。時間通りに戻って来れてよかった。
それから家に入ってアランを起こし、みんなで朝食をとった。数年ぶりの家族揃っての朝食はとてもいいものだった。




