179話 40000㎞
【ソニックムーブ】を発動させた状態で走り続けて10時間が経っただろうか。まだ端は見えない。途中に世界の入り口が密集しているところを見つけたがそれも見たことの無い、それによくわからない世界ばかりだった。ここまでで予想の5倍以上は走っている。まだまだ続くとなると世界がどれだけの数あるのかわからなくなる。
さらにそれから14時間。走り始めて丸1日が経った。あれからも密集地帯は見つけたがお目当ての物はなかった。そしてこの空間の端に到達することもなかった。単純計算で17000㎞走っても端まで来ないとなるとこれは大変な作業になりそうだ。
それからさらに24時間が経過した。そのころ私は……
まだ走っていた。いくつもの世界の入り口の密集地帯は見つけたものの、お目当ての物はないし、端にたどり着く気配もない。これはどうすればいいのだろうか。まだ距離があるとなると調べ上げるだけでもかなりの時間がかかってしまうだろう。
さらにそれから8時間と少し、時間を計測する魔法を生み出して走り始める前に距離を測る目安として測っていたので正確な時間を把握できたが、とにかく大変だった。飲まず食わず寝ず休まずに動いても大丈夫な体のはずなのに疲れを感じている。この疲れは肉体からくるものだろうか。それとも精神の疲れからくるものだろうか。私は目の前に広がっている景色に絶望していた。
そこに広がっていたのは世界の入り口の密集地帯。そして最も近くにある世界の入り口を鑑定した結果【鬼世界】。
つまり私は元の場所に戻ってきてしまったのである。他の世界も同じだし、入り口の配置も全く同じなので間違いないだろう。考えられる可能性は2つ。1つは偶然、もしくは何者かの意思でここに転移、もしくは誘導された。もう1つはこちらの方が現実的な気はするが、この空間自体が輪を構成している。要は地球が球体なのと同じようにこの世界も横幅が狭いので急にはなることができないだろうが、輪っかになっているのではないかということである。
そう考えるのが最も自然な気がする。となると対処法は一つ一方向に向かって鑑定しながら走り続けるだけだ。計測した時間はおよそ56時間40分。そこから密集地帯を調べていた時間を差し引くとだいたい56時間20分。つまり地球の円周とほぼ同じ40000㎞ということになる。大変だが、やる以外に方法もなさそうなので決意をする。40000㎞を【ソニックムーブ】を使わずに走るとなると、移動だけでも大体1か月半かかりそうだ。それに密集地以外の世界の入り口を1つ1つ調べるとなると2か月以上はかかってしまいそうだ。仕方がないだろう。{朱雀}と{白虎}のスキルを得てもほかに神獣スキルを獲得できる世界があるかもしれない。そのため、その2つだけ倒せばいいというわけでもないのでかなり大変だけれど頑張ろう!




