169話 {太陽の裁き}
【時間停止】が解除されてからも集中し続けていたので周囲の音は聞こえていなかったが、魔力を練り上げ終えたところでやっと周囲の状況を知ることができた。目の前に転がっている閻魔は怒鳴り散らしている。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!!!このように我を拘束してその上我の言葉を無視するとは。絶対に殺してやる!!」
相当キレているらしい。これ以上キレさせると何をされるかわからないのですぐに倒してしまうことにした
「無視してすみませんね。魔力を練るのに集中していたもので。あなたを拘束できたおかげであなたを倒す準備が整いました。これからあなたを倒します。」
「つまらぬはったりよ。アンデッドが我に攻撃できるわけないであろう。先ほどの攻撃を連続して打つことは出来ないだろう。それくらいしないと我には勝てぬぞ。」
いい加減これ以上時間を取りたくはないので魔法を発動させえることにした。
「いい加減戦いを終わらせます!複合想像物理魔法{太陽の裁き}!!」
私は魔法を発動させた。その瞬間周囲の時間が止まったような感覚に包まれる。厳密にはとてつもなく遅くなったことで止まったように見えているのだろう。
そしてよくわからない数式が頭の中に浮かんできた。おそらく魔法の効果で演算が行われているのだろう。閻魔を対象に魔法を発動させるには空間のどの位置に水玉を発生させ屈折させるのがいいのか。そして閻魔を確実に絶命させるにはどの軌道でどの位置に攻撃すればいいのかなど、様々なことを事細かに演算しているのだろう。思考が遅くなっているのはいうなれば【思考加速】といったところだろう。私自身が演算をしているわけではないが、魔法の効果での演算は私を媒体として行われているらしく、その効果は私にもあるらしい。しかし、その間私にできることはないので数式を思い浮かべながらただ待つしかなかった。
体感時間で10分ほどが経過しただろうか。ようやく演算が終わったらしく、水玉を発生させる最適な位置が確定したらしい。これに私が同意することで魔法が発動するということらしい。
もちろん同意し、その魔法の恐ろしさを自分自身わかっていなかったということに気づかされる。
【思考加速】が解除され、現実の動きが通常に戻った。実際には1秒しか経過していないらしい。つまり【思考加速】は周囲の動きを300分の1のはやさで認識できるというとんでもないものらしい。
しかしそれ以上に恐ろしいことが起こったのはこの直後だった。目の前にたくさんの光の筋が現れたかと思うと、閻魔が消えた。
私は何が起こったのかわかっていたが周囲で見ていたゴーストたちにはわからなかったらしい。
計20本の光による攻撃が行われるように水玉が配置された。その水玉が同時にその場に現れ、それを伝って太陽の光が温度を上昇させながら閻魔に接近し、20の光が同時に閻魔に直撃した。その瞬間高温で貫かれた閻魔の肉体は光の触れなかった位置をも巻き込んで蒸発し、肉を貫き骨まで到達した。骨もその温度に耐えることができず、蒸発してしまい、何も残らなかったのだ。
それから数分間の沈黙が訪れた。