167話 『神の御業』
遅くなった時の中ですぐさま魔法の作成に取り掛かる。もちろん閻魔の動きが完全に停止したわけではないが余裕でかわせる程度には遅くなっている。当たらないように気を付けながら。
そういえばHPが無限にあるけれど、閻魔の攻撃を受けたらどうなるんだろう。死なないならば動かずに集中して魔法を創ることもできるかもしれない。一度動かずに攻撃を受けてみることにした。念のため掠る程度になるよう気を付けながら攻撃を腕に受けてみた。
するとこれまでVITの高さ故にけがをすることの無かった腕がスパッと切られた。おそらく防御力を無効化しているのだろう。念のため自分を鑑定してみるとそれ以外にも攻撃による変化があることに気が付いた。
ステータスの欄に通常表示されることの無い精神力の表示があり、120/200となっていた。
つまり今の一撃で精神力を80も削られたことになる。これはかすり傷じゃなかったら即死レベルの攻撃だ。つまりこれ以上攻撃を受けることは出来ない。とにかくかわしながら魔法の開発を続ける。それでも先に【時間停止】のタイムリミットが来てしまう。
まだ完成しないので再び【時間停止】を発動させる。
今開発している魔法には相手に太陽熱の屈折を利用して攻撃するのに必要な位置に水玉を発生させるだけでなく、それを発生させるのに最適な位置がどこなのかの演算をする効果も付与しようとしている。以前、演算に関しては実験してみたことがあったので簡単に作ることができる。水を発生させる魔法も簡単だ。しかし何よりも難しいのがこれらの魔力構造をどのように組み合わせるのかだ。
単純に効果が発動する順に組み合わせるのではそもそも何も起きなくなってしまう。少しのずれで事故に至ったり、自分に効果が跳ね返ってきたりしかねないので慎重に作業をしなければならない。うまく魔力の構造を絡まらせて少しずつ魔法を形にしていく。
ルービックキューブを創造してみると分かりやすいかもしれない。1面を完成させたらそれを維持した状態で他の面をそろえる。やっていることはこれとあまり変わらない。魔法の発動から順に少しずつ正しい動作をするようになっているかを確認しながら完成に近づけていく。
そして【時間停止】を10回は使っただろうか。それだけ長い時間をかけてついに閻魔を倒すための新たな魔法が誕生した。
その魔法はこの世界で初めて、『閻魔』という存在に傷をつけた魔法{光熱照射}。それを最適化することにより、威力を最大限まで上昇させ、たくさんの光を敵に同時に浴びせて焦がしつくす。そんな最強の魔法。
この世界では、最強の存在である『閻魔』に対して、異世界からの来訪者の最強の一撃が放たれる。
それは、この世界だけでなく、後に【基軸世界】を含む多くの世界で知られ『神の御業』として伝説にその名を残すことになるのだった。




