163話 『アンデッドゴッド』閻魔
ゴーストたちに追いかけられ続けて1時間が経った。どこに行っても場所がばれてしまうのと、ゴーストたちは上位種でもない限り本能で生者に襲い掛かるらしく逃げ続けるしかなかった。
1時間が経って十分な騒ぎにはなったので一度スキルの効果を解除する。するとゴーストたちは散り散りになって去っていった。私の近くを歩く者もいるが全く気にする様子はない。
走り回って精神的に少し疲れてしまったので建物の陰に座って休憩する。しばらくゆっくりしていると、役人と思わしきゴーストの声が聞こえてきた。
「先の結界の解除及び生者の出現騒動を受けて閻魔様が降臨なされた。犯人の追及が行われるので中央広場へ集まるがよい。集まらなかったものは即座に死刑に処されると思え。」
騒ぎになって閻魔が出てきてくれたらしい。ここまでは想定内だが、降臨したというのが気になる。常にこの世界にいるわけではないのだろうか。神的な存在なのかもしれない。
とにかく鬼世界の時のように死刑になると面倒ごとになりそうなので中央広場とやらに向かうことにした。場所は分からなかったがほかのゴーストたちも向っていたのでそれについていった。
中央広場には多くのゴーストが集まっており、その中には数人上位種の【物の怪】がいた。しかしそのどれもが役人や武士風の服装をしていたのでおそらく上位種は優先的に出世できるのだろう。そしてその中央に明らかに他の者と異なる風格の人物がいた。
『アンデッドゴッド』閻魔だ。
種族はアンデッドの最上位種『アンデッドゴッド』この世界の『アンデッドゴッド』は閻魔以外に存在しておらず、すべてのアンデッドの力を扱うことができる。そして無限の魔力を持ち、すべてのアンデッドからの攻撃を無効化する能力を持つ。それに加えて、相手が生者でなければどんなことであろうと見透かす鑑定能力まで持っている。対アンデッドにおける最強の存在というべきだろう。
しばらくして、外から輪の中に入ってくるゴーストたちが減り始め、それがいなくなると、閻魔の横にいた【妖魔】が話し始めた。
「これより、騒動を引き起こしたものを裁く裁判を執り行う。閻魔様の許可なく口を開いたものは無間地獄の刑に処されるゆえ、心せよ。それでは閻魔様のお言葉である。」
「皆の衆、久方ぶりである。我が姿を見せるのは100年ぶりというところだろうか。ここに結界を張って以来姿を見せていなかったのだが、それは我自身が結界となりゾンビどもからこの町を守っておったからである。しかし、我の結界を破りゾンビどもを倒し上位種に進化したものが現れた。これはこの世界の方に抵触する行為である。それに加え、そのものは生者に化けて町の者どもを惑わした。我の鑑定で犯人は分かっておる。今すぐに名乗り出れば無間地獄の刑で許してやろう。しかし名乗り出ぬというなら今この場で魂ごと粉砕してやろう。」
閻魔の言葉が終わり沈黙が訪れる。
ここは名乗り出るべきなのか死刑に抵抗して戦いに持ち込むべきなのか。ただ、魂を粉砕するといった閻魔の言葉からおそらく私の鑑定に引っかかっていない別のスキルを所持しているはずだ。それを考えると死ぬ恐れのある行為をするのは自殺行為だ。ここは一度名乗りを上げてみることにしよう。
 




