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162話 【死者世界】と進化

そこは予想とは異なる場所だった。【死者世界】に入った私の目の前に広がっていたのは普通に人が暮らしていそうな町だった。しかし道行く人々は全身が少し透けており種族はゴーストだそうだ。周囲の建物は和風のものばかりで江戸時代の街並みといったところだろうか。しかし、馬車なども走っており、一概に日本の風景というわけではないようだ。もちろんその馬も少し透けていた。

そこで自身の体を見てみたのだが、やはり透けていた。しかし他の人たちよりも少し濃い気がした。どんな状況かわからないので種族だけ鑑定してみることにする。

まずは待ちゆく人々の種族だ。


種族:ゴースト


やはり種族はゴーストのようだ。周囲の馬も鑑定してみたが、それらはゴーストホースとなっていた。動物たちはそれぞれのもとの種族によって変わるらしい。

そして私自身の種族は【物の怪(もののけ)】。ゴーストの上位種に当たるらしいがなぜこの世界ではグレーターやロードなど上位種を示す言葉が付くのではなく全く別の言葉になっているのだろうか。

それはそうとして、この世界では私はゴーストの一種でその上位種であることくらいしかわからなかった。もっと何か情報を得たかったが周囲を見てみても何も得られるものはなかった。


とりあえずしばらく街を歩いていたのだが、しばらくすると町の外が見えてきた。町の外の方に近づくにつれて嫌な気配が大きくなってきた。

そしてその気配の現況が姿を現した。それはゾンビやスケルトン。町の中に腐臭をもたらさないように結界で区切られてはいるがその結界に大量に群がっていた。気持ち悪かったし、とても見ていられるものではなかったが、ここで少し思いついたことがあった。もしこれが町中に入ってきたらどうなるのだろうか。わざわざ結界まで這って侵入を阻止しているということは腐臭以外にも何か理由がある気がする。それを調べたいと思った私は結界の鑑定を行った。すると驚くべきことにこの結界はこの世界の支配者である閻魔本人が張ったものでその名を[閻魔の結界]。

ゴーストとそれに連なる種族以外の侵入を拒むというものだった。それと同時に種族の進化が起こらないよう規制もされていた。

つまり閻魔は進化を恐れていたということになる。ゾンビたちの侵入を拒むようにしたのもおそらく進化、もしくは種族的な変化をもたらすからだと思われる。

自身より強い存在が生まれるのを恐れていたのかそれ以外の理由があるのかわからないが、とりあえず結界を破ることは出来そうだ。しかし、ここで結界を破って問題になるのは面倒なので少しだけ穴をあけてみた。すると思っていたよりにおいは感じなかった。しかし、見ていたいものではないのでゾンビとスケルトン1体ずつが入ってきたらすぐに結界を閉じた。

どうすればいいのかわからないのでとりあえず素早い動きでそれぞれに触れてみたが何も起こらなかった。それならと、目立たないよう規模の小さな攻撃魔法で両方の存在を倒してみた。

すると、それらの死骸が黒い粒子に代わり、それが私の中に吸い込まれた。そして目の前にディスプレイが現れ、


[ゾンビ因子とスケルトン因子の獲得による進化]


と表示された。先ほどの黒い粒子は因子と呼ばれるものでこの世界ではすべての存在が持っているものらしい。

特定の因子を獲得することで進化することができるらしい。それから数秒経って、再び目の前にディスプレイが表示された。


[進化に失敗。因子が失われました。]


結界に邪魔されて進化できなかったのだろう。因子が失われるのはなぜかわからないが、この結界がある限り進化することは出来ないということらしい。おそらく閻魔は今のわたしよりも上位の種族なので念のために進化しておいた方がいいと思う。

結界を壊すのが手っ取り早そうだけどそれで騒動を起こすのは面倒だけど、その騒動で閻魔が来てくれれば儲けものか。

結界の鑑定は終えていたのでそれを構成する魔力を解く魔力の構成を魔法として打ち出せばよいだけなので簡単だった。しかし、ゾンビやスケルトンに町中まではいられるのは面倒なので広域ではあるが、この結界の周辺に壁を造ろう。


「想像魔法【見えざる壁(インビジブルウォール)】」


魔法により目には見えない特殊な壁を造り出す。これなら高さは3メートルほどと低いがとてつもなく滑るのでどちらからも登ることは出来ないだろう。

次に結界を崩壊させる魔法を発動させる。といってもこれは魔法というより魔力弾に近いものだ。ただ自分の望んだ形に練り上げた魔力を結界にぶつけるだけ。それが結界の一部にしか触れなかったとしてもその効果は発動する。

結界は魔力が撃ち込まれた地点から徐々に崩壊していき、ついには一切なくなってしまった。

そして町中が騒ぎになっている中、私は先ほど作った壁の上に飛び乗り、一気に魔法で倒してしまう。範囲を町の周囲に指定し、その形は円状だ。その位置から内側に被害が及ばないよう注意しながら懐かしい魔法を発動させる。


「極大魔法【グラビティノヴァ】」


魔法の発動により町の周囲のみが結界に覆われ、私はその中の重力を最大にした。その瞬間地面は陥没し、町は浮いているような見た目になってしまった。それも外に出るのはとても大変になってしまったのだ。重力を強めすぎたことを少しだけ反省しながら目の前に表示されたディスプレイの文字を読む。


[ゾンビ因子とスケルトン因子の獲得による進化]


[成功。種族【妖魔(ようま)】に進化。続けて1万のゾンビ因子並びに1万のスケルトン因子の獲得による進化]


[成功。種族【魑魅(すだま)】に進化]


進化は成功したようだ。これはなかなか強そうな種族になれたと思う。

種族【魑魅(すだま)】の固有スキルが一時的に私の体に付与された。その固有スキルが{生者}。他の者から見て生者に見えるよう姿を変えることができるらしい。その際に死者に対しては生気がみなぎるように見せることになる。

これはなかなか良さそうだ。この騒ぎだけでは閻魔は出てきてくれないかもしれないし、何なら犯人だと気付かれないかもしれないから、これを使って生者がいると勘違いさせてしまおう。そしたら騒ぎが起こってさすがに閻魔本人が出てきてくれるだろう。


「スキル{生者}」


発動と同時になにかが違う感じがしていた肉体がしっくりとくるものに変わった。容姿は元のわたしの姿になったようだ。

それと同時に町の方では先ほど以上の騒ぎとなり、私のいるところへ目がけて一斉にゴーストたちが群れてきた。

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