147話 粘体スキル{喰}
人間を探しながら森を抜けようと頑張っていた私だったが、5日程で森を抜けることができた。
人間の町らしきものもあったがなんだか様子がおかしい気がする。とりあえず人間は近くにいなさそうなので町に少しづつ近づく。遠目でも人間が奴隷として扱われているのが分かる。
何者が支配しているのかまでは分からなかったが、人間ではなさそうだ。とりあえず町の外に人間の死体がいくつか転がっていたのでそれに近づき触れてみる。するとスキル{コピー}の効果が発動し、人間に姿を変えることができるようになった。
これで魔法も使えるようになったので、【想像魔法】で新たに波長の合うものと視界を共有し、視界を共有した存在を操ることができる魔法を創り出す。
「想像魔法【視覚共有】」
そう唱えると目の前に町の上空の景色が映し出された。この町を支配しているのはスライムのようだった。なぜスライムが人間を使役しているのかまでは分からないが、絶対的な存在であろうことは見て取れた。とりあえずその景色を共有した鳥を操って私のもとへと連れてきて鳥に姿を変え、魔法を解除する。するとその鳥は飛び去って行った。そして私も飛び立った。
翼を使って空を飛ぶこと自体初めてだからまだ不慣れだが何となく飛ぶことは出来た。そして町の方に行きその中の城のような建物まで飛んでいく。そして一番高い位置にある部屋の窓のへりに止まる。中には1匹のスライムがいた。明らかに浄化にいるスライムたちとは格が違う。
(そこの鳥よ、貴様の正体は分かっておる。中へ入ってくるがいい。)
そのスライムは念話を使いこなしていた。私は魔力回路をつないでいない相手に念話を使うことができないので人の姿になり
「バレましたか。その通り私の正体はスライムです。念話が使えないのでこちらの姿で話させていただきます。」
(念話も使えないとは、哀れよのぉ。それで我に何用か?)
「何となくここで一番あなたが強そうなので純粋に戦いたくて来ました。いろんな世界を回って鍛えている最中なので」
(そうか、では死ぬがいい)
そういうと同時にそのスライムは酸を飛ばしてきた。それも特別強力で人の骨まで簡単に溶かしてしまうほどのものだ。かろうじてそれを交わした私はそのスライムに改めて向き合う。酸の速度、凶悪性その両方がとてつもない。当たっても大丈夫かもしれないができればノーダメージで済ませたい。
鑑定魔法はこの世界では使うことができなかったので相手の弱点や耐性もわからないまま戦わなければならない。かなりきついが、どうにかするしかないだろう。
(ほぅ、今のをよけるか。我の酸は世界で最速、最凶といわれているのだがな。これほどの強者ならば名乗りを上げるのが礼儀だろう。我が名はライム。この世界の支配者である。)
「私はリア。【リアの世界】の創造主にして【基軸世界】の勇者兼魔王です。」
(どの世界も我の知らぬ世界だな。どうせこれは耐えられぬだろうよ。)
そういってライムは魔法を発動させた。魔法の名前は自身にしか聞こえない念話で唱えているのだろう。発動した魔法は【粘体監獄】。大量のスライムで織りなされた監獄だ。これではなかに魔法を打ち込まれたらまずいかもしれない。とりあえず魔法対策のプロテクションマジックを発動させるべきだろう。
そう考え、魔法を発動させようと口を開いた瞬間頭上から大量の酸が流し込まれた。先ほどのものよりもさらに強力な酸のようだ。少しづつ体が解けていくのを感じる。
幸い、この世界では酸による攻撃は魔法攻撃として扱われるらしいのでRSTで耐えることができている。
しかしこんなものを浴び続ければいつかは解け切って死んでしまうだろう。それは嫌なので打開策を考える。ライムが酸の放出を止めたので即座に魔法を発動させる。
「【プロテクション・マジック】【地獄の業火】」
自身を巻き込みこの空間をすべて燃やすほどの広範囲の【地獄の業火】これならばライムでも耐えれないだろう。
燃やし続けること1時間自然と消えた業火のあとにはスライムらしきものが床に落ちていただけでそれ以外に何もなかった。おそらくこれがスライムの死骸なのだろう。これを触れてスキルとか擬態を獲得できないか試してみよう。
恐る恐るではあるが触れてみる。すると【基軸世界】の時と同じように目の前にディスプレイが現れた。
〈粘体スキル{喰}を獲得しました。スキル{時空間移動}の制限が解除されました。〉
これで『世界の狭間』にも帰れそうだ。新しいスキルも手に入ったがこれは後から確認することにしよう。
「スキル{時空間移動}」
あっという間にこの世界でスキルを獲得した私はスキルを発動させ『世界の狭間』へと戻った。




