145話 次の世界へ
「【海水召喚】、【絶対零度】」
そう唱えるとまず頭上から大量の海水が降ってきた。その後その海水ごと周囲を凍らせる。
先ほどの【インフェルノ】により、トリアは体内に水分がほとんど残っていない状態になった。魔法の火であぶることでダメージを与えることは出来なくても周囲の水分は蒸発する。
そして植物が苦手とする塩水をぶっかけ、それで氷漬けにした。少なくとも体内の水分や栄養が固体になり活動すること自体難しいだろう。それでもまだ意識を保ち戦う意思を見せているのでトリアはすごいと思う。
「これだけやってもまだ生きているとは。さすがこの世界に1体しかいない『魔王種』ですね。魔法にはこんな使い方もあるんですよ。自然の摂理を利用して相手を追い詰める。これも戦法の一つです。」
「まさかこんなことをするとは許さんぞ、小娘がぁぁぁぁぁぁぁ…………」
だんだん声が小さくなっていき、やがて生体反応が消える。理由を鑑定魔法で突き止めたのだが、相手の自爆らしい。
どういうことかというと相手は大技を使うための力を地中から取り込もうとしたらしい。それ自体は間違っていないことなのだが、今ここの地面には大量の海水がしみ込んでいる。そのため、植物であるとリアは、それを大量に体内に取り込んで死んでしまったようだ。
なんだかあっけない気はするが、仕方がない。枯れたとリアがそこに残っていたので、この世界の適当な場所へ転移させた。これで1年後には復活することだろう。
さて私はこのダンジョンを崩壊させて、一度世界をつなぐ空間、通称『世界の狭間』へ向かうとしますか。地上まで転移して、スキル{豊穣の貢ぎ}を発動させる。
その効果でこの『ニケダンジョン』を崩壊させた。このダンジョンな万が一このまま残してモンスターが湧き出たり、挑戦者がいたら死人が出たりしてしまう。
崩壊自体はすぐに完了したので
「スキル{時空間移動}」
そう唱えてスキルを発動させる。そのまま『世界の狭間』へ転移した。
そこは何とも言えないような空間だった。何もない空間の中にいくつかの裂け目が見える。そこに移っているのは様々な世界の様々な場所。それぞれが時間の進みが異なるので入る際は気を付けなければならない。
裂け目以外には何もなく、ただ何なのかわからない虹色の筒状の空間が広がっているだけだった。
ただそれだけの空間。これこそが各世界のトップの存在にのみスキルが与えられ入ることが許される『世界の狭間』である。そこにはありとあらゆる世界の【創造神】や、それに準ずる存在が行き来する特別な空間だった。




