144話 『樹木魔王』
ゴブリンキングを倒した、すなわちこの階層のクリアである。これであと10階層で最下層である第100層に到達できるのである。
ここまで4年以上とかなり長かったがそれなりに力はついたと思う。
しかしここからが長かった。第91層以降はこれまでの階層よりさらに複雑な構造になっており、突破するのに倍の時間がかかった。そして1年と1か月程が経過したころ、ようやく第100層へ向かう階段に到着した。そして第100層に突入する前にしておかなければならないことがある。
「スキル{豊穣の貢ぎ}」
スキルの効果でこの世界の設定画面を開き、『ニケダンジョン』の100層を選択する。そこにいるこの世界で唯一の『魔王種』である『樹木魔王』トリアを選びスキルを確認する。その中に{死後再生}というものがあるのを確認する。これは死んだ後、自動的に再生が開始し、1年後に復活することができるスキルだ。植物や無機物系のモンスターの最上位種が持っていることがある。
これでトリアを殺してしまってもまた復活するので、この世界のパワーバランスを崩すこともないだろう。
そこまでするとスキルを閉じ第100層へと足を踏み入れる。
「よくぞ参った挑戦者よ。我はこの『ニケダンジョン』最下層である第100層を守護するこの世界で唯一の『魔王種』、『樹木魔王』トリアだ。引き返すなら今のうちだがそれでも我と戦うか?」
「えぇ、そのためにこのダンジョンを作り、あなたをここへ招き挑戦しているのですから。この世界の【創造神】である私、リアがお相手いたします。」
相手に会わせてそう答えてみたが、なんだか気持ちがいい。ただ後になってこの光景を思い出すたび恥ずかしくなるんだろうな。
「ほぅ、そなたがこの世界を創造したとな?笑わせてくれるわ。その年で世界の想像などできるわけがなかろう。わしでさえすでに諦めてしまった神の御業ぞ。」
「信じなくてもいいですよ。それでは始めましょうか。」
「あぁ、どこからでもかかってくるがいい。」
トリアのその声とともに戦闘が開始した。それと同時に私は切りかかった。すべての魔法物理攻撃が意味をなすことはなく、複合属性による物理攻撃でしかダメージを与えることができない。
そのため、弱点であるはずの火属性を相手にわからないように剣にまとわせたのだ。これならそれなりのダメージが期待できそうだ。しかし、そんなに甘くはなかった。
「小娘よ、その程度のスピードでは我に捕らえられてしまうぞ。このようにな。」
トリアがそう言いながら大量の蔦を触手のように伸ばしてくる。私はそれにあえて捕まる。
「カカカッ。その程度だったとは見当外れだったようだな。このまま我の養分にしてやるわ。」
そういいながら締め上げてくるが問題はない。無詠唱で魔法を発動させる。
「【プロテクション・マジック】、【インフェルノ】、【プロテクション・マジック】」
3連続で魔法を発動させる。魔法による効果はないがそれでいい。
「なんだ小娘わしには魔法が効かぬのでな何をされたのかわからぬわ。」
「まぁ焦らずに見ていなさいな。」
さらに無詠唱で2つの魔法を発動させる。