141話 階層ボス ゴブリン
ボス部屋へ着くと同時に悪臭がした。多くのモンスターがその場に長い間はびこっているような悪臭だ。
目の前を見るとそこには視認できないほど大量のゴブリンがいた。中には上位種も混じっているようだが、もはや多すぎてどれがボスかが分からない。幸いまだ距離もあって気づかれていないようだし魔法を発動させてしまおう。
想像魔法で一つの魔法を創り出す。大量殺戮のための魔法。
「想像魔法【死のオーラ】」
私がそう唱えると同時に目の前にいたゴブリンたちがすべて倒れた。
この魔法【死のオーラ】は浴びたもの全員が対象となり、即死耐性をもとに判定が行われる。即死耐性の強さによって変わるが、ここにいるゴブリンはどの個体も即死耐性を持っていなかった様ですべてが死んだ。もちろん自身にも効果があるのでもし使う際は即死耐性を持つか、オーラを浴びない方法を考えなければいけないが。
とにかく倒し切ったのでこんなにおいのきつい空間からは早くオサラバしよう。
そう思って、ゴブリンの死骸に背を向け魔法陣の方を見た時だった。背後で大きな音が鳴った。何か巨大なものが落下するようなそんな音だった。
あまりに突然の事だったので驚いてそちらを見ると、1体の巨大なゴブリンが近づいてきていた。先ほど鑑定したところ、すべてのゴブリンが死んでいたとのことだからおそらくは何かしらのスキルで生き返ったのだろう。厄介だ。
「ファイヤーボール!」
少し魔力を多めに込めてファイヤーボールを放つ。着弾すると同時にゴブリンが倒れる。
これくらいは耐えるだろうと思って放ったのだけれどなんかこれで倒せたみたい。これでようやく第11階層に行くことができる。そう歓喜しながら転送陣で階段へ戻る。すると階段前に張っていた結界が解除され通れるようになっていた。八十夫の思い出半年間かけて10層を突破し第11階層へ到達できたのだった。
それからは変わり映えなく、半年かけて10階層ずつ突破していった。いつしか4年の時が流れ第81階層まで到達していた。当初の予定よりも遅れてはいるが全く問題ないはずだ。元の世界の時間の進みは圧倒的に遅いのだから。
この調子ならあと1年もあれば100層まで到達できるだろう。元の世界では30秒程なはずなので誤差に過ぎない。
しかし、モンスターも結構強くなってきたなぁ。私のレベルはダンジョン制覇まで確認しないつもりではあるけど、毎日1万体以上は倒してるし、それなりに上がってるはず。順当に考えて、1400万体以上のモンスターを倒しているということだ。これでレベルが上がらないのなら何かしら別で方法を考えなければいけない。しかし、このダンジョンは頑張って作ったし、普通に挑戦してて面白いからクリアまではステータスを確認しないでこのダンジョンを楽しみたいのだ。
そんな時間もあと1年もすれば終わってしまう。永劫の時を生きることができる私にとって1年とはまさにあっという間なのである。
今日は運がいいのか、1日で第82階層に行くことができた。このままどんどん進んでいき、5か月後には第90階層に到達していた。
ここから先はすべての階層の階段にボスが仕掛けられており、どれも凶悪だ。これらがいるだけでも人間にクリアできるわけがないダンジョンといって過言ではないだろう。しかも、何が出るかランダムなので私自身も何が出てくるかわからない。
とりあえず第90階層のボス部屋へと入る。
そこには第10階層と同じ光景が繰り広げられていた。しかし、その不衛生さはさらにひどく、ゴブリンの数も明らかに増えておりリアの魔法で観測したところその数10億だそうだ。膨大な範囲の10億のゴブリンを倒さなければならない。しかもそれらをすべて倒してようやくボスが登場するという鬼畜仕様だ。とにかく、最も効率の良い【死のオーラ】で数を減らすが、せいぜい5万くらいずつしか減っていかない。もっと効率的に倒す方法はないものか。




