138話 旅立ち
転移した先はニケ村。両親にもこの世界を離れることを伝えておきたいと思ったのだ。
家の前まで走っていき、扉をノックする。すると中から。扉が開けられ、
「リアじゃない!目覚めてそんなに立ってないけど調子は大丈夫なの?」
お母さんが驚きながらそう声をかけてくる。お父さんも今日は休んでいたらしく家の中から出てきた。
「大丈夫だよ。それで、少し話があるから来たんだけどいいかな?」
「えぇ、もちろんよ。お昼を食べながら一緒に聞こうかしらね。すぐに準備するから待っててね。」
そういえば食事もあまりとってなかったな。種族的な特徴として、食事不要だったり、不老不死だったりするのであまりとっていなかった。
お母さんはテキパキと準備をして、食卓には幼いころはいつも食べていた昼食が並んだ。
「さて食べましょうかね。」
「はーい!」
私は自然と気分が高まっていた。おそらくこれが旅立つ前に食べる最後の食事だろう。
そう考えながらもおいしいのでどんどん食べ進む。
そんな時お父さんが声をかけてきた。
「それでリア、話ってのは何なんだ?」
聞かれてしまっては答えるしかないので一度食事の手を止めて話始める。
「突然で悪いんだけど、私この世界からしばらく離れようと思ってるんだよね。」
そういうと同時に二人の表情が硬くなる。それでもかまわずに続ける
「私って、世界を作り出したことで進化して【創造神】になったんだ。それでその世界で修業をしようと思ってるんだ。その世界はこの世界よりも時間の進みがとっても遅いんだけど、その世界での修業が終わったらまた別の世界で修業しようと思っててしばらく帰ってこられなさそうなんだ。」
言い終えると沈黙が流れる。
しばらくの沈黙の後、お父さんが口を開く。
「どうしてそこまでして強くなりたいんだ?」
「贖罪のため。私はこの世界の【創造神】に操られ、友人になれそうだった人物を殺してしまった。その贖罪と復讐、そして二度と負けないことを自分に誓うために強くなりたい。」
そういい終えると、お父さんは満足したような顔をしていた。
「理由はどうであれ、本気の目を見せてもらった。いいぞ、行って来い!ただ、俺たちが死ぬ前には戻ってきてくれよ。」
「うん!」
そんな感動的な会話を交わした後は、家族で仲良く他愛ない会話を続けた。その内容は決して外に出せるようなものではなかったと思うけれど、それは別にどうだっていいだろう。
こうやって家族と楽しく過ごすこと。これこそが私にとって最大の幸せであるということを改めて実感できた。しかし、二人はいつか死んでしまう。それでも、家族といえる人たちといつまでも楽しく話すことができる。そんな日常を守っていくためにも今は戦おうと思えた。
「行ってらっしゃい。帰りを待っているからね。」
「うん。しばらく会えないと思うけど、病気をせず健康に生きてね。」
私はそうとだけ言い残すとニケ村から去った。そしてスキル{時空間転移}で魔王城へ転移した。アンチデューンとカインにこれから出立することを伝え、玉座の間へ向かった。そして
「スキル{時空間転移}!!!」
そう唱えその位置の指定を【リアの世界】のとあるダンジョンに設定する。そういえばこのダンジョンに名前を付けていなかった。転送が開始されそうな状況で考えることではないけれどまぁいいだろう。
そうだな、私の修業の地となるダンジョンだ。それにふさわしい名前を付けてあげなければ。
そうだ!この名前こそこのダンジョンの名前にふさわしいだろう。
そして私は【リアの世界】にある『ニケダンジョン』前へと転移した。




