137話 旅立ちの支度
「入って~」
そういうとカインとアンチデューンが部屋にはい行ってきた。
「さてと、今日二人に来てもらったのは一つ重要な話があるからなんだけど、まぁ、長くなると思うからそこにかけていいよ。」
そういって、部屋に合ったソファの方を指さすと、二人は素直にそこに並んで座った。
「それじゃ、さっそく本題に入ろうか。まず、ここに来てまだ1日もたってないし、急で申し訳ないんだけど、しばらくここから離れることになると思う。具体的な期間は分からないから何とも言えないけど。」
「離れるとは言うがどこに行く気なんだ?」
カインがそう聞いてくる。まぁ、そりゃ気になるところだよね。
「私が作り出した世界、そこに大量にモンスターが湧き出るダンジョンを作ったの。そこでさらに力をつけるための修業をしようと思う。その世界はこの世界よりも時間の進みが早いけど、そのダンジョンでの修業が終わった後もいろんな世界を回って力を付けたいと思ってるんだ。私はもっと強くならないといけないから。」
「世界を回るというのは分かりました。しかし、どれほどかわからない期間お戻りになられないとなるとさすがにリア様自身もご不便ではありませんか?こちらの世界にお戻りになられた際にいろいろと変化が起きているかもしれませんし。」
アンチデューンが今まさに求めていた発言をしてくれた。やっぱり彼女は優秀で助かる。
「それで呼び出したのよ。私とあなたたちをつなぐ魔力の回路。これは世界を渡ったらもちろん使用できなくなる。けれど、私が作った魔法術式なら世界を超えて対話することができる。アンチデューンにはそれを教えるためにここに来てもらったの。後で一気に魔法術式についてまとめた紙を渡すから頑張って読み解いてみて。使えるようになったら私にその魔法で通話して教えてね。」
「かしこまりました。」
アンチデューンがそう返事をする。なんというか少し淡白だが、それも彼女の良さだろう。
「それじゃ、僕は何のために呼ばれたんだい?」
「カインには、この世界に私がいない間の魔族の統治や外交を任せたいと思うの。一応クヌム王国の国王様には伝えてあるけど、他の国とのつながりはそもそもないからそういうことがあった時とか、クヌム王国に何かあった時の対応、他国との交渉をしてほしいの。カインにもアンチデューンと同じ魔法についてまとめた紙を渡すけれど、何か問題があった時か、自分で判断できない時だけ使うようにしてちょうだい。基本的にはどの国とも友好関係を築くようにしてほしいけど、ゼリア皇国だけは不可侵程度に留めておいてちょうだい。」
「分かった。それで、それ以外にも何かあるんだろう?」
「さすがカインね。二人にはもう一つしてもらいたいことがあるの。それは魔王軍を作ることとその育成よ。」
「おっと、予想外の答えが聞こえてきたんだが、魔王軍を作るって正気か?」
「えぇ。といっても戦争をしたりそういうことのためじゃなくて、犯罪者を取り締まったり、私が人生最後の決戦をするときの戦力にしたりするためのものよ。だから数は少なく、少数精鋭で組成するように。」
「分かったけれど、軍隊となると想像もつかないな。もちろん魔物や魔族で構成しなければならんのだろう?」
「もちろん。人間側の戦力を割くわけにもいかないしね。10人や20人でもいいからとにかく世界中を回って精鋭を集めてきて。それと、二人もレベル1なんだからレベル上げに励むこと。レベルは上げづらいだろうから、この部屋を使って。」
「この部屋がどうしたのですか?」
アンチデューンがそんな当たり前のことを尋ねてくる。こういう反応が返ってくるのはこちらとしても話しやすいからとても助かる。
「私たち全員がこの部屋から出た後、この部屋を私の世界に作ったダンジョンと同じものに作り替えるわ。そうしたら、ひたすらそれなりに強い魔物相手に戦い続けることになるからレベルがかなり上がるはずよ。ただし、レベル上げは他のことがすべて落ち着いた時だけでいいから。外交や魔物や魔族のスカウトの方に力を入れてちょうだい。もちろん軍勢の育成も忘れずにして頂戴ね。」
「かしこまりました。」
「あぁ、わかった。」
「それじゃあ、この部屋を改造するからこの部屋から出ましょうか。」
私がそういうと2人も続いて部屋から出た。そして想像魔法でダンジョンを作る魔法を創り出し、発動させる。その内部設定は【リアの世界】に創り出したダンジョンとほぼ同じものだ。これで2人もちゃんとレベルアップできるだろう。
「それじゃ、今夜にはこの世界を離れるからよろしくね。私はこれから行くところがあるから。あと、これ。さっき言ってた魔法をまとめた紙。結構難しいことが書いてあるから読み解くまでに時間がかかるかもしれないけど頑張ってね。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
「行ってらっしゃい。」
二人に見送られ、私は目的地付近まで転移した。




