135話『魔王族』と『魔王種』
魔王城に帰還するとなんだか寂しく感じる。
これまで家族のように接していたリーンやレイ。そのほかにもたくさんの人たちのことを思い出してしまう。いつでも会うことはできるだろうけど、しばらく戻る気はない。その理由をカインとアンチデューンそしてお父さんとお母さんにも話しておかないとな。
けどもう夜も遅いし、今日は寝ることにしよう。
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そういえば私の部屋って決めてなかったよね。今日は適当な部屋でいいかな。
アンチデューンとカインの部屋が隣同士だったはずだからその近くの部屋で寝よう。確かアンチデューンの部屋の3部屋先の部屋のベッドが整えてあったはずだからそこに行こう。
暗い廊下を歩いていると、何もいないことは分かっているのになぜか怖くなってしまう。やはり前世の記憶と性格は多少なりとも残っているようで困りものである。
とにかく速足で部屋まで行き、ベッドに腰かけた。寝る前に確認しておきたいことがある。
私の世界は今どんな風になっているんだろう。近くの部屋ではアンチデューンが寝ているんだから起こしちゃわないよう気を付けて小声で……
「スキル{豊穣の貢ぎ}」
そう唱えると【リアの世界】に存在するスキルとその詳細が目の前のディスプレイに表示される。
ちょっと前から自分でも気になってたけど、口調も何か考える時もだけど、幼い自分と、そうでない自分が混じったようで気持ちが悪い。とりあえず話すときは相手によって変えて、何かを考えたり、自分の脳内で話をしたりするときは、幼くない自分として話すようにしよう。
そう心に誓いつつディスプレイを見るとそこにはたくさんのスキルが表示され、タップすることでスキルの詳細が閲覧できるようだ。右上にはメニュー表示があり、そこをタップすると、3つのアイコンが表示される。1つ目は今見ていたスキル一覧のページにつながっている。
2つ目をタップすると、また文字がズラっと表示される。読んでいくと、この世界に存在する生物をまとめたものみたいだ。人間や獣人族、様々な種類のいる亜人族、魔獣や魔物、植物まで載っている。その中で2つだけ目を引くものがあった。
『魔王族』 『魔王種』
『魔王族』とは魔王となる素質を持って生まれた魔物や魔族の事、もしくは大量の魂などをエネルギーとして獲得し、魔王の素質を得た魔物や魔族のことを指すようで、すでにこの世界にも3体の魔王族が確認できた。すべてが個体名まで獲得しているようで、それらが持つスキルはどれも強力なようだ。スキルの確認は後回しにしてその存在についてだ。
まず1体目。とある人物が快楽目的でサキュバスを召喚した。そのサキュバスは召喚者だけでなく多くの男たちを襲い喰らった。それにより、大量の魂を獲得し『魔王族』へと進化した存在。
『淫魔女王』リアス。
次に2体目。とある龍が洞窟で寿命により死亡した。その近くにいたキマイラがこれを取り込み
それにより『魔王族』へと進化した存在。
『混成魔王』リュキア。
最後に3体目。とある『神族』と『悪魔族』が禁断の恋に落ちた。その二人はその恋をあきらめることができずこの世界で人間に化けて暮らすことにした。その二人の一人息子。彼こそが『魔王族』そして堕天使としてとして生まれた存在。
『堕天魔王』ルシファー。
『神族』というのはこの世界に存在する神の使いといわれている存在でいろいろなものがいる。動物のような姿のものから、とても生き物とは思えないほど化け物じみた見た目をしたもの、人間に似た容姿のものなどさまざまらしい。
そして『魔王種』。
『魔王族』と大して違いがないように見えたが、これが大きく異なるものだった。
『魔王種』とは、『魔王族』になったものの中で、その力を覚醒させることができたもののみが到達することができる種族だそうだ。普通なら『魔王族』の方がニュアンス的に上に感じるがそれはスルーしよう。
【リアの世界】に存在する『魔王種』は1体。
世界の誕生と同時に生まれたとされる1体のトレント。通常トレントは動くことができず、寿命を迎えると死ぬだけで何のために生きているのかわからないような種族なのだが、このトレントは生まれながらにして名を持ち、周囲から栄養を吸い上げることができた。そのため、周囲にいた同族から適度に栄養を吸い上げ寿命を迎えることなく生きていた。世界の管理者とも呼べるこのトレントは人間が国家を築き上げているのを知っていた。そして周囲にいた同族や植物から栄養を吸い上げ、周囲を荒れ地にした。そしてその調査にやってきた人間たちを吸収し、その力と姿を得た。このトレントが生まれながらにして得ていたスキルは{森羅万象}と{吸収}。
{森羅万象}であらゆる事象を把握し{吸収}で取り込んだ相手の力を姿をそっくりそのまま自分のものにする。これによって自由に移動できるようになったトレントは人間に扮し、モンスターを狩っては取り込むことを繰り返し、いつしか世界で最初の『魔王族』になっていた。しかし、本人はそのことに気が付いておらず、ひたすらに力を求めて様々なモンスターを吸収し続けた。その期間およそ1000年。
そして本人が自覚すると同時にスキルとその力が覚醒し、『魔王種』へと至ったそうだ。
『樹木魔王』トリア。
この4人が【リアの世界】で最も強い4人らしい。しかし他にも『魔王族』へ覚醒する見込みがあるものはおり、今後も発展が進んでいくことが期待できる。
だいぶたった気がして時間を確認すると【リアの世界】について確認し始めてから1時間が経っていた。それを自覚すると急に眠くなってきた。スキルを閉じると、そのまま吸い込まれるように眠りについた。




