132話 超越存在
「それで何で二人はここにいるの?」
「それがアンチデューンさんが突然家に来てリアが苦しんでるって聞いたからあわてて駆け付けたのよ。」
「アンチデューンが……。」
自然とうれしくなる。それほどまでに自分を心配して気にかけてくれている。そんな配下を持つことができたことに感激だ。
「私たちにできることはなかったけど、アンチデューンさん曰く血縁の者が触れるだけでも本人にとってそれがいい影響を与えることだってあるのだから、って言われてひたすら手を握っていたわ。そうしたら10分ほどであなたが目を覚ましたの。」
「そう、ありがとう、パパ、ママ。二人が握ってくれた手、意識はなかったけどそれでもとってもあったかかったよ。それがなかったら私壊れてたかもしれない。無意識の内側でいろんな感情に飲まれてたんだ。それを二人のぬくもりで乗り越えられたんだから。」
そういうとリリスがリアを抱きしめる。
「あまり無茶はしないでね。これからもかわいい私たちの娘でいてちょうだいね。」
「うん。一応、後ろにいる二人にもお礼とか聞きたいこととかあるからいいかな。」
「そうね。ごめんなさい。私ったらつい感情的になっちゃって。」
リリスが悪びれた様子でそう言うが、あの感じだと反省しているわけでもないだろう。まぁ、そんなところもリリスのいいところではあるのだけれど。
「アンチデューン、カイン、二人ともありがとうね。私と一緒にいることを選んでくれて。そして私を助けてくれて。」
「とんでもございません。あなた様の幸せこそが我の幸せなのですから。」
「その堅苦しい感じやめようよ。カインみたいにもっと友達と話す感覚でさ。」
「善処します。」
アンチデューンはフレンドリーに話すのがまだ苦手らしい。それでも克服してもらわないとまるでリアがパワハラ上司みたいに見えてしまう。
「カインもありがとうね。二人とも相当強くなったみたいだけどステータス開示しても大丈夫かな。」
「「もちろん」です。」
二人とも返事をした。カインは冒険者カードを差し出してきた。アンチデューンはリアが鑑定の魔法をかけ、それを大きく壁に映し出した。
アンチデューン 超越存在[悪魔] 243歳
スキル{分身}{道連れ}
Lv.91
HP 4300
MP 7200
STR 7000
VIT 3600
RST 6200
AGI 570
魔法:各属性最上位魔法・各種召喚魔法
称号:超越存在
超越存在って何?
これがリアの最初の感想である。アンチデューン曰くこの世界の理において、各種族の最上位種が稀にたどり着くことがあるとされている最強の種族の事だそうだ。その強さは元の種族によって異なるが大抵の魔物や魔族よりも強く、最弱モンスターと名高いスライムでさえ、人間には対処できないほど強いと言われている。
それにしてもステータスがとてつもない。今回の進化を遂げる前のリアと大差ないステータスさえある。これならたとえこの世界にリアが滞在していなくても安心して任せることができる。
次にカインの冒険者カードを確認した。
カイン 超越存在[不死者]
スキル{魔力操作}
種族固有スキル{自己再生}{使用MP軽減}{不死者}
Lv.1
HP 150
MP 460
STR 340
VIT 50
RST 620
AGI 10
魔法:各属性最上位魔法・各種召喚魔法
称号:超越存在
一度死んでいるからかレベルは低くステータスも大したことがない。しかし、スキルの効果には目を見張るものがある。
{魔力操作}これは文字通り魔力を操れるようになるスキルである。もともとカインが魔法を使えないので習得したと思われる。
次に{自己再生}。これはどんな傷を受けようと回復する。それが生命活動によってしわが増えたり、体内年齢が老いていくことにさえ有効なスキルである。
{使用MP軽減}は文字通りで{不死者}が超越存在[不死者]にのみ許されたスキルである。
その効果はまず絶対に死なない。ただし魔王のスキルにより効果は無効化可能。しかしそれだけでなく、数多のアンデッドを魔力消費なしで召喚することと、魔力消費なしで死体からアンデッドを作り出すことができ、それらをすべて指揮下に置くことができる。
これまた最強格のスキルである。しかし使いどころを選ぶうえ敵のステータスが低いうちは戦えるが、高ステータスモンスター相手にはダメージを与えることすらできないだろう。
その分魔力が多めでこれだけ優遇されたスキルを持っているということなのだろう。最強の配下が2人も増え、人間にとって現代の魔王が後々最強の勢力になるのだがそれを知るものはまだいないのだった。