128話 【創造神】の誕生
絡みついてきた触手が魔力を吸い取っているようだ。リアの膨大な魔力量をもってしても脱力感を覚えるほど急速に魔力が吸い上げられていく。吸われる前のリアの魔力は全快状態だったのだが、1分もたたないうちに半分まで減っている。
しかし、1分半ほどたつとディスプレイの光が失われ、触手も消えてなくなった。魔力残量を確認してみると、残り1000程度になっていた。普通の人間からすればあり得ないほど多いが、リアからすればそう魔力の1000分の1である。
世界を作るのにそれだけの魔力を消費したのである。しかし、その甲斐もあって世界が誕生したようだ。ディスプレイが二つになり、それぞれに違うことが書かれていた。
[【リアの世界】が誕生しました。新たに習得した観察魔法によって世界の観察が可能になります。同時に、新たに習得した【時空間移動】の効果の登録先に【リアの世界】が設定されました。自由に行き来することが可能となります。]
[【リアの世界】を創造したことにより、『魔王』リアは【創造神】へと進化しました。創造した世界の理を定め、その世界での絶対的な力を保有します。ほかの世界の【創造神】のいる亜空間〈天界〉へ転移することが可能となります。]
思っていたよりもあっさり【創造神】になってしまった。
「本当に成功したわね。」
横ではリーンが絶句している。
と、その時リアの脳内に声が聞こえてきた。
「リア、カインだ。」
苦しそうな感じをさせながら声をかけてきたのはカインだ。以前の口調で話すよう指示したら少し違う気もするが気軽な話し方になった。
「カイン?どうしたのずいぶん苦しそうだけど。」
「すまない。急にあらがえないほどの眠気に襲われて……」
そこまで言うと声が途切れたおそらく入眠してしまったのだろう。
「すみませんリーンさん。カインに何かあったみたいなので一度離れます。すぐに戻ってきて詳細を伝えます。」
「分かったわ。それじゃ、またあとで」
リーンはそういって明るく送り出してくれた。しかしその表情には少し影がかかっており、おそらくカインが心配なのだろう。リアは宿屋の自室に急いで戻ると魔法陣で城まで転移した。
城の魔法陣からそう離れていない場所でカインが倒れていた。なんとなく分かってはいたが、進化の眠りについたようだ。おそらくリアが進化したことでリアと魔力でつながれているカインにも影響が生じたのだろう。鑑定したところちょうど1か月後に目覚めるようだ。
何となくだが嫌な予感がしてアンチデューンの部屋も覗いたのだが、彼女の進化の眠りの期間も今から1か月後に伸びていた。
カインとアンチデューン二人ともにこの日から1か月の眠りについてしまったのだった。