126話 平穏な日常
1か月近くがたったある日、リアはスキル{賭博}の[創造]を使って何が作れるのか試していた。まず手始めに取り掛かったのはスマホだ。文明機器を作ることができれば生活の水準も上がり、何より暇なときに時間をつぶしやすくなる。
スマホを想像しながら[創造]の効果で出現したディスプレイに触れると、スマホが出てきた。形状や材質は全く同じのようだ。
ワクワクしながら電源ボタンを押してみた。
しかし反応がない。長押ししてみても同じだった。どうやら中の回路まで再現されていないらしく、ただのスマホの見た目をした金属の板のようだ。
電子機器がダメならと、鉄砲を思い浮かべてみた。正直こんなものよりも魔法の方が効果は高いのだが、いざというときの護身用として役に立つだろう。しかし、画面に触れた途端、静電気のような感じで指がバチっとした。
ディスプレイを見てみると、
[禁則事項に当てはまります。]
と表示されていた。
つまり日本の武器をこの世界で再現することはできないということだろう。これは残念である。
それでもリアはいろいろと創り出そうとしてみたが、この世界に存在する物質で作られていないものや危険物などはどれも禁則事項に引っかかってしまい、複雑な構造の物は上手く再現できなかった。
再現することができたのは、以前作り出せたペットボトルに入った水・お茶と、同じく缶に入った水とお茶、そして段ボールなどの梱包材や日用品くらいだった。
しかし、娯楽のないこの世界にとって、暇をつぶすことができるものを作り出せたのはいいことだ。
一見そんなものがないようにも見えるが、これを作り出したリアはあまりのなつかしさに1日中これで時間をつぶしていた。
プチプチである。荷物とかに入っていて、潰して楽しめるあれだ。簡単な梱包材なのでこれだけは作ることができた。異世界の物を作り出すことは、基本的に禁則事項のようだが、一部生活の水準をあげるものは作れるようだった。ほかにもいろんなジャンルのものを試してみたがほとんど作れなかった。
この日は朝からこの作業をし、昼からはリーンのところへ行かなければならないので向かうことにした。3日に1回言っているうちに普通にいろいろなことを話すようになり、良き友人になっていた。今では、行かなければいけない3日に1回の日以外もいくことがあるほどに仲良くなった。
リーンの部屋の前に立つと、
「リーンさん、来たよー」
軽い感じで声をかける。
「どうぞ、入って」
中から同じく軽い感じで声がかけられる。お互いに合える時間を楽しみにしているのだ。
中に入るとリーンがすぐにお茶を入れてくれた。
そして向かい合って座ると、たわいない話をし始めた。これが彼女たちの日常になっていた。




